『おなら~小さな世界の中で~』白川湊太郎−ショート小説コンテスト③

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『おなら~小さな世界の中で~』

6×6に学習机が並べられた教室。
私は一番後ろ、左から3番目の席で化学の授業を受けていた。
黒板とノートを繰り返し見るという首の上下運動を繰り返す。
チョーク、シャープペンシルの音だけが聞こえる教室。
突然、ブッと短い音がする。
その瞬間に授業中の教室は今まで以上に静かになる。
おならをした犯人が生徒の中にいることぐらいみんな分かっていた。
音が出た後に、一瞬の間を空けて、生徒たちは一斉にどこから生まれた音か探しはじめる。
30人近い生徒達の目線によって、おおよその方向はわかる。
私もみんなと同じように音のした方を見た。
前から3番目、左端の席に座る男子がクラスメイト全員に向けておどけた表情をしてみせる。
「なんだお前かよー」
「へへへ、わりーな」
犯人がクラスのお調子者だとわかり、教室の雰囲気も和やかになる。
私も周りと同じように少しだけ笑っていた。
「こら、何を騒いでるんだ。」
先生はおならの音には気づいていないらしく、生徒達が理由もなくふざけだしたと勘違いしているようだった。
再び、チョークとシャープペンシルの音だけが聞こえる教室へ戻っていく。

しかしに数分後、さっきよりも大きな音でブーッと音がなった。
多くの生徒が音の鳴った方を向く。
私も一番前の席へと顔を向けた。
一人の生徒が隠れるわけもないのに、自分の身体を小さくさせていた。
おならをしたのはクラスでも浮いた存在の男子だった。
今まで友達を作らず誰とも話さなかった彼に対して、私達は誰もからかうことができなかった。
さっきのお調子者もどうしたら良いのか分からず苦笑いをしている。
同じようにからかうことができたらどんなに楽だったろうか。
私の席からは彼の表情を見ることができない。
一番前の席に座り、クラス全員の視線を背中に受けながら、どんな気持ちで黒板の文字を書き写しているのだろう。
よどんだ空気のままで授業は続いていく…

〜白川湊太郎〜

ショート小説コンテスト

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