『美女〜理不尽な食物連鎖〜』黒川洸太郎−ショート小説コンテスト④

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『美女〜理不尽な食物連鎖〜』

この20人ばかりのイベントサークルの組織図はこうだ。男性リーダーをトップに据えて、3人の女性幹部が企画を考え、リーダーに提案。他の16人がそれに参加する。といった具合だ。

だが、そんな組織図はただの業務フローであり、人が集まりサークルという集団になっている理由となる裏組織図が存在する。

その中核を握っているのが、この3人の女性幹部の中の一人、春香ちゃんだ。この美人の春香ちゃんを目当てにイケメンが集まり、このイケメンを目当てに普通の女や普通以下の女が集まり、春香ちゃんを目当てに普通の男、そしてそれ以下の男が集まる。

春香ちゃんへの恋が実らないと知った男は徐々にサークルへ行かなくなったり、妥協して普通の女と付き合ったりして、春香ちゃんにおめでとうなんて言われてる始末だ。

美人の春香ちゃんはと言うと、精神的に余裕があるから、人並み以上に明るくて性格も良い。それは後天的ではなく、一本の直線のレールを走ってきただけの結果のため、性格の良さにも全く嫌味が無く、それが自然な春香ちゃんだ。

だいたいこの類の美女は、性悪女が徒党を組んでいじめめいたことを企むのだが、大学というオープンで男女の友情が複雑な彩りを見せる空間で、このような徒党を組むリスクを性悪女は負えない。

よって春香ちゃんは最強だった。
そして私はそんな春香ちゃんのことが好きなイケメンのことを好きな普通以下の女だった。

何回も春香ちゃんのことを憎んだが、それでも春香ちゃんがバランスを保っているこのサークルでしか彼には会えず、春香ちゃんには感謝するしかなかった。当然私は春香ちゃんに話しかけられるとすごく嬉しかった。

彼と私と春香ちゃんの3人で、臨床心理の学科試験の勉強をマクドナルドでやってるときなんか、この時間が一生続けば良いと思った。最強の二人の間に存在する私はこの世で一番幸せだった。私は彼の近くにいるだけで満足だと自己暗示をかけながら日々を暮らそうと思った。

そんな中、普通以下の夏美がイケメンの彼に告白をしたという噂を、普通以下の男から聞いた。私はその出来レースのような告白の顛末を一応聞き、残念だったね。と普通以下の男に悲しそうに言ってみた。すると、普通以下の男は私に

「お前も頑張れよ。」と言った。

私はそのとき、みんなもこの裏組織図が分かりながらも、どこか諦めながら日々を暮らしているんだと知った。私は普通以下の男に、

「頑張れって、よく分からない言葉だよね」と面倒なことを言う。すると彼は

「理不尽には理不尽でしか勝てないんだよ。」と言った。

普通以下の男の発言にハッとしたが、私はそれでもこの普通以下の男と結ばれることはない。イケメンの彼が好きなのは変わり無い理不尽な現実だった。

男は彼女に言った言葉を自分自身に置き換え反芻する。

〜黒川洸太郎〜

ショート小説コンテスト

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