『オプション〜より豊かな生活を〜』白川湊太郎−ショート小説コンテスト⑥

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『オプション〜より豊かな生活を〜』

あるところに案内所があった。前世と来世を繋ぐその案内所には、豊かな生活を求めて多くの生き物が集まっていた。
そこへ人間の男として産まれる予定の者がやってきた。
「ここはなんだ?」
「転生案内所です。来世での生活がより良いものになるよう、事前にオプションを追加しておくことができるのです」
「そんなもの、初めてきいたぞ」
「お客様が前世でキツネとしての生活を楽しまれている間に設立されました」
「ふん、特に楽しくもなかったけどな。どんなオプションがあるんだ?」
「お客様の場合ですと、来世は人間の男性として生まれることしか決まっておりません。ですのでまずは産まれる家庭の環境からでしょうか」
「そんなことが決められるのか?」
「もちろんそれなりの代償はありますが…」
「これはすごい。大富豪の家に産まれるようにしてくれ!」
「わかりました」
「それに加えて俺の顔は整っているようにしてくれ、賢い人間であることも重要だ」
「お客様、あまりにオプションを追加しすぎるのは…」
「次はいつ人間になれるかわからないんだ。思いっきり楽しんでやるぞ!」
その後も男はできる限りのオプションを追加した。
大富豪の家に産まれて、美男美女の両親に愛されて育つ。
街でのスカウトがきっかけでモデルをしながら、東京大学を首席で卒業する。
医者として働きながら、多くの女と遊んだ後に、最高の相手と出会って結婚する。
そして自分に似て優れた子供が産まれる。
これが彼の選んだ人生の追加オプションだった。
(今から俺は誰よりも幸せな人生を過ごすんだ!)
未来が待ち遠しくて、母親の胎内にいるときから気分が高揚していた。
産まれた瞬間、彼は大きな声で泣いた。人生を楽しむことの意思表示をしていた。
しかし彼の身体はあっというまに衰弱してしまった。
(なぜだ、俺は今から幸せな人生を過ごすはずなんだ…)
そう強く唱えていたが、彼の人間としての生活はほんの数分間で終わってしまった。
 
「うーん」
「どうしたんですか?」
「1年前に人間になる予定でここに来たお客様なんですけど、オプションを追加しすぎたせいで、それを楽しむ前にお亡くなりになったんです」
「追加オプションの代償は寿命だとお伝えしなかったんですか?」
「こちらが何度説明しようとしても、全然聞いてくれなかったもので…」
「今後はオプションと寿命のバランスを考えた人生プランをこちらで提案する必要がありますね」

〜白川湊太郎〜

ショート小説コンテスト

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