『水槽〜なつくなよウンコマン〜』黒川洸太郎−ショート小説コンテスト⑧

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『水槽〜なつくなよウンコマン〜』

「おいウンコマン。お前のウンコめちゃくちゃ長かったなぁ。」コンドウがクソほど面白くないイジリをしている。
キムラは無視を決め込んでいる。
「朝なに食ったらあんな臭いウンコが出るんだよ。なぁウンコマン教えてくれよ。」相変わらずのサブさだ。
キムラは無視を決め込んでいる。
「なぁミブシー。ウンコマンの耳ウンコが詰まって聞えねぇみてぇだぞ。」コンドウとミブシが笑う。
キムラは無視を決め込んでいる。

「あいつらはウンコしねぇのかな?だとしたら逆にクソほどきたねぇな。」
一呼吸置いてから俺はキムラにこう話しかけた。励ますつもりなんてさらさら無い。ただこの言葉が無いと、コンドウのサブいノリがこの世で許されてるようで居心地が悪かっただけだ。

一瞬何が起こったのかキムラは分からなかったようで、少し間が出来た。だが

「はははは!」と突然笑い出した。キムラは縁のない眼鏡を揺らしながら笑顔で俺を見た。明らかに笑い慣れていない。
俺はキムラの笑い声を初めて聴いた。別に何も嬉しくはなかった。逆に、その笑い声に凄く嫌悪感を覚えた。なんかすげぇキショかった。
「全然おもしろくなかったよな!」キムラに話しかけられたが、俺は対応に困った。
『調子にのんじゃねぇよメガネ。』と心の中で呟くが、「おう。あいつらは基本的にサブイ」と言うと、キムラはまた嬉しそうに笑った。

帰宅部の俺は終わりのチャイムがなるとすぐに帰る。金魚たちが俺の帰りを待っている。いや、エサを待ってるだけか。

「一緒に帰らないかい?」また突然話しかけられた。今日はよく話しかけられる。どうせキムラだろうと思って振り返るが、その声の主はヤマムラだった。

昨日ヤマムラの机には『死ね』と書かれていた。俺は兄貴の引き出しに砂消しがあったのを思い出し、今日の朝ヤマムラに貸してやった。『死ね』は文明の利器によって消滅した。

俺は自分の居心地が悪いだけで、お前を救おうなんて気持ちはない。俺が優しい人間だと信じているんだろうか。逆にキショイんだよお前らなんか。

『なつくなよ』と本気で思ったが、「早く帰らなきゃいけないんだ。すまん。」と言い、ヤマムラの顔色も観ずに俺は歩き出す。
「うん。バイバイ。」と聴こえてきて、振り返ろうと思ったが『なんで俺が気を遣うんだ。』と心の中で呟いて、小走りでその場を離れた。

部屋に帰ると、西日が水槽を照らしていた。とても神々しくて奇麗だった。
俺の足音を聴いただけで金魚は水面まで上がり口をパクパクさせる。
エサを一杯入れてやる。どの金魚も他の金魚に気を遣う事無く、手当たり次第にエサを食う。
一匹の金魚は全然食べれていなかった。
かたや、沢山食べ終えた金魚は悠々と泳いでいる。こいつらに共通して言える事は俺に媚びる事は無い。公平なんて言葉はこの世界には存在しないことを理解している。

俺もお前らにエサを与えるのは優しさではない。自分の居心地が悪いだけなんだ。

『水槽ん中はシンプルで良いよな。』心の中で呟いた。

−黒川洸太郎−

ショート小説コンテスト

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