『水槽〜支配している〜』白川湊太郎−ショート小説コンテスト⑧

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『水槽〜支配している〜』

水槽の魚が好きだ。
海の魚は自分で餌を獲り、自分の好きなように泳ぐ。。
それに対して水槽の魚は、私が自由に餌をやり、私が決めた範囲だけで泳ぐ。
この透明なガラス箱の世界を支えている、いや、支配している実感が得られるのだ。。
私は水槽の魚達が私の入れた餌を食べる様子を確認してから家を出た。

「先生にはこのクラスで授業を行っていただきます」
「はい…」
「大丈夫、みんな明るく元気な生徒達ですよ」
「そうですか…」
クラスの担任であるベテラン教師が前を歩く。
キャリアを感じさせる彼女の背中を眺めながら、自信なさそうに後ろをついていく。

「そ、それでは、さんすうの授業をはじめます。教科書の23ページを開いてください」
私は目の前にいる生徒達を見渡す。
隣同士で話し始める生徒
急に立ち上がり、教室の中を走り回る生徒
まるで、海の魚のように自由だった。

これは私の好きな水槽ではない。
この魚達を支配することができない。
早く教室から出てしまいたいが、ここから出ることを決めるのは私ではない。
透明なガラスの向こうから、ベテラン教師が私の観察をしていた。
そうか、ここでは私も水槽で生きる一匹の魚に過ぎないのか。
息が、苦しい…

−白川湊太郎−

ショート小説コンテスト

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