『角〜私欲のために〜』白川湊太郎−ショート小説コンテスト⑨

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『角〜私欲のために〜』

あるところに悪魔が住んでいました。
悪魔の仕事は、山のふもとに暮らす山羊たちから角を奪い取り、人間に売りとばすというものでした。
昔からサイの角が漢方薬に使われるという言い伝えはありましたが、山羊の角もその当時の難病が治る特効薬とも言われており、高額で取引されていました。
山羊にとって角は代わりの利かないもので、奪われると死んでしまうのですが、悪魔はそんなことお構いなしで、私欲のために山羊の角を引き抜いていました。

ある日のこと、悪魔は人間から「今すぐ山羊の角を持ってくるように」と言われました。
悪魔は「そんなこと無理だ」と返しましたが、「いつもの倍以上の代金を支払うから」とお願いされたので、奥の手を使うことにしました。
それは“悪魔自身の角を売る”というものでした。
この悪魔がつけている角も元々は山羊の角でした。山羊は角がないと死んでしまいますが、悪魔にとっての角は魔法の力が宿った装飾品のようなものであり、外すことが可能でした。
「またすぐに奪えば良い。山羊が相手なら魔法の力がなくても問題ないだろう」
金に目がくらんだ悪魔は自分の角を売り飛ばしてしまいました。

取引を終えて角がなくなり、魔法が使えなくなった悪魔は、夜になってから山羊の集落へ向かいました。
「とりあえず手近の角を奪って、早く帰ろう」
そんなことを考える道中で、一軒の小屋を見つけました。
「こんな場所にも山羊が住んでいるのだろうか…」
不思議に思いながら扉を開けると、何やら寝息が聞こえます。
悪魔が目を凝らして暗闇の中を見たら、布団の端から大きな角が見えているではありませんか。
「なんと大きな角だろう!いつも使っている山羊の角よりも一回りは大きい。これだけ立派な角が俺のものになったら、さぞ素晴らしい魔法を使えるようになるだろう」
悪魔はこの大きな角を奪うことに決めました。
起こさないようにそっと近づき、角にそっと触れてみました。
角はひんやりと冷たくて、ずっしりとした重量感もありました。それはまるで牛の角のよう…
悪魔は大きな角を思いっきり引っ張りました。
「なにをするのだ!!!」
角はなかなか抜けず、寝ていた生き物が目を覚ましてしまいました。
起きた生き物を見て、悪魔は驚きました。寝ていたのは山羊ではなく鬼だったのです!
勘違いしていた悪魔は大変です、魔法が使えない状態では鬼を相手に勝ち目がありません。
さっさと立ち去ろうと振り返った瞬間、鬼が悪魔の翼を掴みました。
「勝手に家に入ってきたんだ、お詫びに翼を置いていけ」
そういうと、鬼は悪魔の翼を引きちぎりました。
「ぎゃあああああああ!!!!」
小屋中に響き渡ったその声は、まさに悪魔にとっての断末魔。
悪魔にとっての翼は山羊にとっての角と同じで代わりの利かない身体の一部であり、悪魔はすぐに息絶えてしまいました。
その後、山羊たちは平和に暮らすことができるようになりました。
ちなみにこの後、人間は鬼に悪魔の翼を取ってくる仕事を依頼しにくるのですが、それはまた別の機会に…

−白川湊太郎−

ショート小説コンテスト

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