『商店街-時代とイオンと時々息子』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト10

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『商店街-時代とイオンと時々息子』

『イオンが出来るらしい』
こんな噂が立っても何もしないこの商店街は糞だ。八百屋も喫茶店も何も考えないのだろうか?このままでは生活出来なくなるという焦燥感が全体的に欠けている。何代も続けてきた暖簾に誇りは無いのだろうか?

俺にも生活がある。一年前古着屋をオープンさせてからそれなりに稼ぎを得た。商店街の客層の平均年齢をぐっと下げ、活性化に一役買ったと自負している。
リアル店舗だけじゃ売上が立たないからネットでも売ってるが、なにかと面倒くさい。一人でパソコンと睨めっこしながら、荷詰め・発送・お礼メールまでやってると休み無しだ。

-3年後-

閑古鳥がなくとはこのことを言うのだろう。八百屋も喫茶店も潰れた。両隣もシャッターが降りている。
俺の夢もこれで終わりだな。ハンガーラックを倒れない程度に蹴飛ばした。

「何してんだよ。」
ハッとする気持ちで振り返ると息子が白けた顔を向けていた。
「店、たたもうと思ってんだよ。」
口にすることで決心が出来た。
「なんで。」
俺はその言葉で今までの歴史がフラッシュバックした。
「世の流れだ。」
「なんだそれ。夢だったじゃねぇか。」
なかなか引き下がらない息子にびっくりした。

「時代だ。この世界どうしようもないこともあるんだよ。」
「なんだそれ。しょうもない。」
「なんだと。」
「お前のせいなのに、時代とか流れとかそんなよく分からないもののせいにするな。」
「お前に何が分かる?俺なりに頑張ってきたんだ。なれないパソコンも勉強した。仕入れも他に負けていない。あのイオンさえ出来なけりゃ今も客はくるんだよ。」
息子が真っ直ぐ俺を見ている。
「なんだよ。」
俺は、俺は。

息子が言う。
「イオンが出来るのは事前に分かってたことだろ。商店街が何もしないのも分かっていた。分かってて親父は何かしたのかよ。その流れってのに身を任せてた親父の責任はないのかよ。」
「うるせぇ」
「ネット商売がんばったら良かったじゃねぇか。面倒くさがって放り出して、」

パンっ!!
いつのまにか手が出ていた。
息子はそれでも俺を真っ直ぐ見てこう言った。
「最低だな。」
「俺だってなぁ!俺だって」
「しょぼい夢だったな。」
息子はもう目を合わせてくれず、またどこか外へと出かけていった。

「分かってるから悔しいんじゃねぇか。」
独りごちると余計寂しく情けなくなった。
俺は小さい頃から息子に『夢を持て』としつこく教えてきた。
そんな息子のアイデンティティまでもを親父自ら否定してしまったのかもしれない。

最低だな。の裏側を、俺も息子も今後誇張していく。

−黒川洸太郎−

ショート小説コンテスト

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