『一生懸命〜あの頃の自分〜』黒川洸太郎−ショート小説コンテスト16

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『一生懸命〜あの頃の自分〜』

営業車の窓からあの頃のグラウンドが見えた。炎天下の中で遊ぶ子どもはほんの数人しかおらず、時の流れを感じた。

ふとバスケットゴールに目を移すとボードに付いてるはずのゴールが外されていた。公園の管理組合は子どもたちの自由よりも高齢者の生きやすさを重視したようだ。

あの頃は、朝早く起きて1人でシュート練習して部活でバスケして、終わってから兄貴達とバスケしていた。早朝はボールが跳ねる音が団地中に響き、なるべく低くドリブルをし、ゴールの手前を狙ってボールを落とさない様に子どもながらに気を遣っていた。

今思うとあの凄く汚い水道水で喉を潤し、犬の便器である砂場でうんこ座りして休み、バイ菌だらけの身体を汗とTシャツで拭っていた。

風でぶれるストリートバスケのスリーポイントは低く打ち、その癖が部活の屋内でも出てコーチから怒られていて、正確さと打ちやすさの狭間で悩んだりしていたっけ。

40分間とにかく走りゴールを多く決めることだけを目指して日々一生懸命練習していたんだ。それが明確な目標であり楽しさだった。

営業車で外回りする僕は何を思い生きてるんだろうか。明確な目標が無いのは自分だけじゃない。おそらく時間の問題だ。

40分走りきることと、50年間働くことのギャップが、一瞬一瞬の一生懸命をぼやかしてしまうのだろう。

これからいくつ倒れそうになるくらいまで走りきる試合が待っているのだろう。

これからいくつ結果を残さなければいけないんだろう。

目の前にあるゴールを貪欲に求め続けてたあの頃から、50年間を逆算してペース配分している自分は一生懸命になれているのだろうか。

ボードからゴールを外したのは大人になっていく自分自身なんだろう。

−黒川洸太郎−

ショート小説コンテスト

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