『麒麟~村の発展~』白川湊太郎−ショート小説コンテスト17

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『麒麟~~村の発展~』

あるところに、貧しい村がありました。
多くの人が野菜や麦を作り、自給自足をしている村です。
その村をもっと発展させようと村長は考えました。
「お酒を造って、この村の名物として売り出そう!」
遠くの国では麦を使ったお酒が人気らしく、この村でも造ろうと考えたのです。
村民たちの努力によって美味しいお酒はできましたが、なかなか売れません。
次に村長が考えたのはお酒を入れる容器の絵です。
幸せな気持ちで飲むことができる絵にしようと考え、中国の聖獣で縁起が良いとされている麒麟の絵にしようと思いました。
そこで念のために麒麟を探して絵を使わせてもらう許可を取りに行くことにしたのです。
麒麟は仁愛ある政治を行う場所にしか現れないと言われる神聖な生き物です。
たまに起こる騒動といえば、飼っている牛や鶏の脱走くらいのこの村では“政治”の概念すらなく、麒麟を見たという人はいません。
そこで、村長自ら遠く離れた都市へ探しに行くことにしました。
麒麟は本当にいるのかもわからない幻の動物です。あてもなく歩いて疲れきってしまい、自分用の飲み水はなくなってしまいました。
残っているのは麒麟のために持ってきたお酒です。
(これを私が飲むことはできない)
村長は喉がカラカラになりながら我慢して探し続けましたが、ついに知らない土地で倒れてしまいました。
もうだめか、と村長が諦めかけたとき、目の前に馬の蹄が現れました。
『おぬし、どうかされたか?』
「はい、喉が渇いてしまって…」
顔をあげると龍のような顔があります。
「あなたは麒麟!?」
穏やかで優しい性格の麒麟が、村長を見かねて助けてくれたのです。
「よかった!私はあなた様に会いたくて遠くの村から歩いてきたのです」
『そうであったか、どうしてまた?』
「私の村で売っているお酒の入れ物に、あなた様の絵を描かせて頂きたいのです」
『ほう、お酒とな』
村長はお酒の入った樽を差し出しました。
『お前、喉が渇いておると言ってたではないか』
「これは是非あなたさまに飲んで頂きたかったのですから」
『そうか…』
麒麟はその龍のような頭をお酒の入った樽に近づけました。
『これは…苦いな』
「その苦さがクセになるのです」
『酒の味はわからんが、お前の熱意は伝わった。私の絵は好きに使うが良い』
「ありがとうございます!」
村長は喜んで帰り、さっそく麒麟が描かれた入れ物を作りました。
入れ物のお陰で村のお酒は大流行です。
「聖獣様のご加護がある」
「ありがたや、ありがたや」
と言って国全体で飲まれるようになりました。
村にはお金がたくさん集まり、政治を行う必要が出てきました。治めるのは村長です。
そうやって発展した村に珍しい訪問客が、馬の蹄で地を駆けながらやってきました。
「あなたは、あのときの!」
仁愛ある政治を行うようになったこの村にも、麒麟が訪れるようになったのです。
『この村もかなり成長したようだな』
「お陰さまで豊かな生活ができるようになりました」
『どれ、久しぶりに飲ませてもらおうか』
「ぜひぜひ、好きなだけ飲んでいってください!」
『これは…やはり苦い。しかし、この苦さがクセになるまで飲み続けようではないか』
こうして、麒麟はたびたびお酒を飲みに村へ来るようになりましたとさ。

−白川湊太郎−

ショート小説コンテスト

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