『靴下~見られたら死ぬ~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト18

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≪1時間目≫
「こんなこと言うのもあれなんだけど、穴あいてるよ。」
隣の席の真理子が遠慮気味に言った台詞が私を強張らせた。
ゆっくりと足元に目を落とすと、かかとに10円玉サイズの穴があいていた。
朝靴下を履くときに気付かなかったのだろうか?いや、そんなはずはない。
こんな大きな穴を見逃すわけがない。

そういえば心当たりがあった。
登校の際に履いてきた私のお気に入りのニューバランスに違和感があったのだ。
少しかかとが痛いなぁと思いながら、こんな日もあるだろうと気にしていなかった。
多分履きすぎて中のプラスチックが飛び出てたのだろう。

かかとに出来た穴をふさぐことはまず不可能だ。
指の方に出来ていれば、裏返してくくってみるか、たるみを持たせて誤魔化せる。
多感な私は真理子の一言で今日一日どうするかを考えに考えた。

≪2時間目≫
10分休憩を私は一切机から離れなかった。
男子に見つかった時点で私の生涯が終わる。
このまま1日をやり過ごすしかない。

隣の真理子はそんな私に付き合うことはなく、
いつもの後ろのグループでけたけたと笑う。
何の話をしてるんだろうか?
私は気が気ではない。たかが靴下。されど靴下。
私の鬼門は3時間目の音楽室。

≪3時間目≫
移動さえ乗り切れば良いのだ。
かかとの部分を少したるませ踏み込む。
すり足の形でほぼかかとを浮かさない。
なるべく人の少ないポイントというより、一番最後。
みんなが行き切った最後の一人で動き出す。
いけるじゃないか。帰りも同じく一番最後。
つまり私はゴルゴ13。後ろを取られなければ死ぬことはない。

≪4時間目≫
≪お昼休憩≫
≪5時間目≫
≪6時間目≫

私はすり足と背後に気をつけ全ての工程を乗り切った。

次の日、私のあだ名が『忍者』になることを、私はまだ知らない。

−黒川洸太郎−

ショート小説コンテスト

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