『毒~保つことのできぬ若さ~』白川湊太郎−ショート小説コンテスト18

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『毒~保つことのできぬ若さ~』

いつまでも若くありたい、そう願う人は多いと思うが、気持ちの強さは人によって異なる。
若さへの執着が強い人ほど、生への執着も強いようだが、逆もまた同じなのだろうか。
小さい頃からテレビが好きだった。その中でも特に好んでいたのはバラエティで、タレントや芸人がふざけている様子に喜んでいた。母親はそんな僕に対して「目の毒だから見るのをやめなさい」と注意していたが、構わなかった。
高校を卒業した僕はタレントになった。母親が「目の毒だから」と言っていたテレビから学ぶことが多くあった。母親にとっての毒は、僕にとっての毒ではなくなった。
しかし若さと勢いだけがあるタレントなど数えきれないほどいる。僕のブームなど一瞬で過ぎてしまい、タレントとしての寿命はあっと言う間にやってきて、30歳になる手前で芸能界を引退した。

「あなたはまだ若いから」
同じ言葉を何度も聞かされていた。だから自分でもそのように思い込んでいた。
鏡を見る。目元には深い皺が刻まれている。もう僕は若くない。
サプリメントをつまむ手の甲も皺だらけだ。芸能界を引退してからも見た目の若さを保つため毎週エステに通っていたが、70歳を境に「皮膚を傷つけてしまう恐れがあるので」と断られるようになった。
今の僕が、老化を食い止めるためにできることは限られている。十分な睡眠を取ること、十分なサプリメントを取ること、そしてテレビを見ることだ。
大好きなテレビを見て知識を得て、内面の老化も抑えている。
今日もテレビを見ていた。僕にとってのテレビは毒ではなく薬だ。一日の大半はテレビを見て過ごしている。
この日は健康番組で「水毒」の特集をしていた。体内の水分が滞った状態では、足がむくんだり、身体が冷えたりと、老化の原因にもなるらしい。
水毒が老化の原因になるなら、僕の身体に起こる老化も生命活動に害がある毒だ。
老化は神様が全ての人間に与えた毒なんだ。
僕は皺だらけの手の甲をさすりながら考えたが、解毒剤は見つからなかった。

−白川湊太郎−

ショート小説コンテスト

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