『鎖骨~バックスリーダーの俺~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト21

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『鎖骨~バックスリーダーの俺~』

南中のガリガリのウイングにボールが渡ると、一気にスピードがあがった。
大きくサイドに膨らみ、スピード勝負に持ち込まれる。
「追い込め!追い込め!」スタンドオフの俺はウイングに指示をする。

こちらのウイングも足は速く、負けていない。
上手くスペースを消しながら追い込むと、相手はステップを踏み内に切り返してきた。
「センターカバーしろ!」
キレのある切り返しに完全に逆をつかれ、ウイングは振り切られるが、そのスペースをセンターが埋めた。
腰元へのタックルは見事に決まり、ガリガリは吹き飛ばされる。
指示通りだ。

すぐにフォワードが密集を作り、ボールの奪い合いが始まる。
ひじ打ち、ヒザ打ちは当たり前。反則の線引きがどこなのかは審判次第なのが、中学ラグビーでの悪いところだ。

素早い球出しから南中のベイブが密集から抜けてくる。
「ハーフ!」と叫ぶが、ハンドオフで突き飛ばされる。
ハーフが振り切られ、スタンドオフの僕が仕方なく対応することになる。
ベイブはまだスピードに乗っていない。

50メートルを7秒で走るこの巨体も、スピードに乗る前に足首にタックルすれば容易に倒すことが出来る。
大事なのはビビらないことだ。引いたらやられる。
勇気を持って前に出ることが、ラグビーの怪我をしないコツなのだ。
一気にベイブの足元めがけ、タックルをする。

瞬間、激痛が走った。
それからのことはよく覚えていない。
相手の南中の監督が俺をおんぶしてくれたこと。
その背中の上でゲロをはいたこと。それぐらいだ。

目が覚めると無機質な天井がうつり、おかんが座っていた。
右の鎖骨がぱっくりと折れていたらしい。
「結局、あれからどうなったん?何たい何やったん?」
「107対0。みんな泣いてたわ。」
「ふん。」と鼻で笑い、「クソ試合やな。」と付け足した。
俺の学生生活最後の夏は、鎖骨と共に終わった。

バックスリーダーとして務めた1年間で身を持って学んだことは
『指示してる奴が一番もろい』ということだ。
きっと偉そうな俺には、誰も見舞いに来ない。

「なぁおかん。カメ買ってきてや。」
「なんで?」
「なんか、、なんか、、ええやん。」
「なんやそれ。笑」

-黒川洸太郎−

ショート小説コンテスト

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