『アンパンマン〜天使と悪魔〜』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト23

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『アンパンマン〜天使と悪魔〜』

「なぁアンよ。ドキンの事どう思う?」
「どうも思わんよ。あんなもん」
そんなたわいもない話を食パンマンとしていた。時々やってきてはパン工場の屋根の上で話したりするのだが、今日の食パンマンは雰囲気が違った。

「俺らの存在意味ってなんなんだろうな?」食パンマンが意を決したかのように話した。
「急になんやねん。そらこの街の治安維持やろうが。」強気で言うと説得力が出ると思った。
「じゃあバイキンが居なくなったら、どうなるの?」本質はここだろう。
「まだまだ食は考えが浅いなー。バイキンはバイキンでおらなあかん『絶対悪』っていうもんやねん。」ある例えを思いつく。
「例えばやで、カバ夫が悪気なくしかけた豚用の罠に、間違ってウサ美が引っかかたとするやろ。」
「うん。」
「ウサ美は怪我するし、当然両親も怒るわな。その時、カバ夫はこう言うねん。『バイキンマンが仕掛けてたのを見た』って。これが絶対悪の存在理由や。」
「アンよ。そらあかんよ。カバ夫が悪いやん。そこはカバ夫がやった証拠を見つけて謝らせないと、そこに正義はないで。」
「それが原因で争いが生まれてもか?」俺は自分の言ってることが間違っていることに気付きながら続ける。

「じゃあ例えばやで。何日も日照りが続いて食料が獲れない時に、大きな魚が海に打ち上げられんねん。それをみんなが有り難がって食うねんな。」
「うん。」
「でもその魚な、物凄い猛毒やってん。」
「うわ。そらひどい話やな。」
「親や兄弟が死んで、それまでのフラストレーションが爆発して、みんなが怒り狂って、今にも暴動が起きそうな中で、カバ夫が言うねん。『バイキンマンが魚に毒を塗ってたのを見たで』って。」
「ほんまかいな!」
「アホやな。ウソやがな。カバ夫は暴動を抑えるためにウソをついてん。」
「そらあかんわ。カバ夫ウソついてるやん。そこに正義は無いで。」
「いや、あるよ。カバ夫はつかんでええウソをついたんやから。みんなを守るための優しいウソや。でも、その一旦を担っているのが『絶対悪』のバイキンマンという存在や。世の中にはどうしようもない事を、誰かのせいにしたいときがあるねん。」
「そんなもんかいな。」

「そんなもんや。食よ。もうちょいでバイキンマンが叫びだすからもう時間ないわ。」
「え?なんで分かるん?」
「なんでってそうゆう設定やから。悪の設定と正義の設定。」
「え?バイキンマンは設定に乗っ取ってんの?」
「当たり前やんか。ジャムが金払って絶対悪してもらってんねん。それを俺が助けてみんなから慕われる。パンが売れる。金を払える。経済活動やで。」

はーひふーへほー!!
遠くでバイキンマンの声が聴こえる。
「ほな、いこか!食パンマン。」 
「今日はなんかそんな気分ちゃうわ。」
「ほうか!ほな行って軽く殴ってくるわ。」

呆然と食パンマンはアンパンマンの言葉を思い返していた。
「バイキンマン死ぬ程ええ奴やん。」

-黒川洸太郎−

ショート小説コンテスト

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