『アンパンマン~英雄~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト23

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『アンパンマン~英雄~』

 生まれつきの障害で、俺は周りにいじめられていた。
 たしかに、障害はある。
 しかし、これでお前らに迷惑をかけたか? と、思う。
 かけた覚えは、まったくないから。

「いじょーしゃ!! いじょーしゃ!!」

 と、クラスでいじめっ子である男子が俺を指してケタケタと笑う。
 それが気持ち悪くて、毎回トイレで吐き出している。

――誰か、助けてくれないかな。

 この苦しくて、つらい状況。
 誰か、助けてくれ。

 俺が何をしたというのだろう。

 生まれつき、虹彩異色症で、色盲なだけ。
 それだけなのに。

 俺は、教室に戻って、ランドセルを持つ。

 すると、担任が俺に「待って、引馬(ひくま)くん」と声をかける。

「引馬くん、体調悪くないのに。勝手に帰るなんて、ダメだよ」

「……さっき、吐いた。気持ち悪い。帰ります」

「そんな、引馬くん。顔色悪くなんかないじゃない。嘘はダメよ。さあ、席に着いて」

「……本当なのに」

 どうして、嘘だと決めつけるのだろう。

 俺の話くらい、聞いてくれよ。

 いじめっ子たちの話は聞くのに。
 俺の話を聞かないで、俺が悪いなんて。

――決めつけないでくれ。

 と、思いながら、席に着いて俯いていると。
 ガタッと、席を立つ音がした。
 顔を上げて、音のした方を見てみると。
 そこには、従兄弟の悠生(ゆうき)が立っていた。
 悠生は無言で、先生を含めて俺以外の人をにらむ。

「ねえ、佑司(ゆうじ)の話を聞けよ。てか、見てみろよ。こいつ、顔色悪いじゃん」

「平沢(ひらさわ)くん。座りなさい」

「いや、俺の話を聞けよ。聞いてくれよ。聞こうとしてくれ。どうして、両目の色が違うだけで、異常者なんて言われて、いじめられなきゃならねえんだ。おかしいだろうが」

「平沢くん、良いから」

「良くないよ! ふざけんな!! お前ら!!!」

 悠生が、あんなに怒っているのは、初めて見た。
 普段は、まったく怒らないのに。

 いつも、優しくて。かっこいい。
 俺の給食がないときは、自分の給食を分けてくれる。

――パンくらいしか、あげられなくて悪いな――

 と、申し訳なさそうに言って。

 ちょうど、テレビでよく見るアンパンマンのような。
 そんな感じに、優しくて。かっこよくて。

 強い。

 そんな、悠生が泣きながら怒鳴る。

「佑司は何も悪くねえじゃん。好きで、こうなってるんじゃねえじゃん。なんで、先生であるあんたまでさ、いじめに加わってるの!? ふざけんなよ、マジで!!!」

「平沢くん、静かに――」

「うるせえ、バカ野郎!!!」

「平沢くん、先生に向かってバカ野郎とはなんですか。お父さんお母さん呼びますよ」

「呼んでみろ。俺は、間違ってない。間違ってるのは、あんたらだ。左右の目の見た目が違うだけで、佑司は普通だし。色があまりわからないだけで、佑司は見えるよ。他の人にうつったりしないよ。何も知らないくせに、勝手に佑司のことを決めつけるな!!」

 悠生はそう言うと、ランドセルを持って、俺のところに来る。

「佑司、帰ろう。父さんに診てもらおうよ。最近、お前、よく吐いてるしさ」

「え? あ、うん」

「じゃ、俺、佑司を家に送らないとなので帰ります。さよなら」

 ピシャリ、と言って、悠生は俺の手を引いて、悠生の家に帰った。
 悠生の父さん(俺から見れば、伯父さん)は、医者だ。
 総合医とかいう、医者らしい。

「ねえ、悠生」

 学校からの帰り道、俺は悠生を見る。
 悠生は涙を拭いながら「何?」と言う。

「どこか痛いところとか、ある?」

「うん……。特にないかな。えっと、そうじゃなくてさ」

「ん?」

「悠生って、アンパンマンみたいだよね」

「は?」

 悠生は噴き出す。

「何それ」

「知らない? アンパンマン、強いんだよ。優しくて、かっこよくてさ。悠生みたい」

「……そういうことか。えっと、ありがとうな」

「それ、俺の台詞だよ。悠生、ありがと」

「どういたしまして、かな。えっと、もうすぐ家だから」

「うん」

 悠生は、俺の手を引いたまま前を歩く。
 優しくて、かっこよくて。
 とても強い。
 そんな悠生に、俺は憧れの気持ちを抱いた。

-緑川凛太郎−

ショート小説コンテスト

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