『タータンチェック〜チェックな君〜』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト24

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『タータンチェック〜チェックな君〜』

「あり得ん。何ゆえ、全身チェックなんだ」

 俺は親友の私服を見て、親友に訊く。

「お前は、あれか? チェッカーズ目指しちょっのか」

「目指してねえ。あいつらが、俺を目指しているんだ」

「やぞろし。殺すぞ」

 そう言って、俺は親友を睨む。

――本当に、バカなのかな。こいつ。

 てか、あまりにもビックリして方言出てしまったではないか。
 ふざけるな、本当に。

「ったく、俺が服選んでやるから、付いてこい」

「えー。文人(あやと)優しい」

「黙れ」

 と、俺は親友を無理矢理近くの服屋に連れていく。

 派手でも、地味でもない、そんな服がこいつには似合うのだ。
 十年近く一緒にいるから、よくわかる。

「とりあえず、一個だけはその赤のターンチェックは残しておいてやらぁ」

「ありがと。これがないと、俺じゃねえからな」

「っるせぇ、言ってろ」

 と、照れ隠し(自分でも、なぜ照れたかはわからん)に睨み付けて、店内を歩いた。

 普通にジーパンとか、どうだろう。
 シャツは、このままチェックにしたままで。
 それだけだと、ダサくなるから、何か……。

 と、考えながら、合わせたりしていると、親友が突然笑い出した。
 ついに、頭がいかれたか、と思い「どうした?」と訊く。

「紀治(としはる)?」

「あ、いや、悪い。なんだか、恋人とデートしているような気持ちになってしまってな」

「デート? 逢い引き?」

「ん、まあ、そうだな。なんか、悪い」

「あ、いや。別に、平気だけどさ。なんで、急にそう思った?」

「いやあ、お前、すげえ真剣に俺の服選んでるじゃん。なんかさ、彼女いたら、こうなのかな? てさ」

「いや、お前、彼女いるだろ? その彼女とは、こういうことしねえの? てか、本当は、彼女と一緒に、こういうことするだろ。わざわざ友人である俺にやらせるなんて、頭がおかしいとしか思えんな」

「彼女とはしない、てか、彼女いるなんて嘘だよ。見栄だよ、見栄。んで、そんな俺に付き合うお前もお前だよ」

「彼女いねえのかよ。じゃあ、なんでいるっつったんだよ」

 んで、なんでホッとしているんだよ、俺は。

――まるで、俺がこいつのこと……。

 なわけ、ねえか。

 俺は、女が好きだし。こいつも、女が好き。
 そういうものだろ? 普通さ。

「なあ、文人」

 と、親友は俺を見る。

「俺が、彼女いるって聞いてさ。どう思った?」

「どうって、どうだよ。なんもねえよ」

「そう。ま、俺もそうかな。でも、友人すら俺しかいねえお前が彼女なんて、あり得ねえか」

「バカにしているのか、てめえは」

 作ろうと思えば、作れるんだよ。
 友人も、恋人も。

「面倒だから、作らねえし。それより、お前、これ着てろ」

 と、俺は濃いめのジーパンと、黒いベストを親友に渡す。

「サイズとかあるから、試着してみろ。試着室の外で待ってるから。声かけろよ」

「ん、わかった。ありがと」

 と、親友は笑って、近くの試着室に入った。
 少しすると、試着を終えた、と声をかけ、カーテンを開く。

「どう?」

「まあ、マシだな。さっきより」

 てか、あれだな。
 やっぱり、元が元で悪くないから、まともな服を着れば、それなりに格好はつくな。
 普段から、こういうまともなものを着ていれば良いものを。
 なんで、こいつは、まともなものを着ないんだ。

 と、考えていると、親友が赤面して俺に言う。

「お前、俺のこと好きだろ」

「は?」

「どんだけ、褒めるの? 普段、褒めないよね。もう、お前、バカなの?」

「いや、褒めるも何も」

「……全部、声に出てたからな。さっきの」

「……え?」

「『元が良い』だの。『格好がつく』だの。マジで、お前、いい加減にしろ」

「え、あ、いや、待って」

 声に出てたのかよ。
 くそほど恥ずかしいじゃねえか。

「やぞろし!!」

「方言出てるって、文人」

「だあ、もう。知らん」

 一気に、熱くなる。
 恥ずかしさからの熱が半端ない。

 右手で、顔を隠しながら、チラリ、と親友を見る。
 親友は、余裕のある顔をしている。

 くそムカつく、と思い、俺は親友を殴った。

 痛がっている親友を無視して、俺は店を出る。
 もちろん、服は買って。

 店の外を出ると、さっきよりも晴れていて腹が立った。

――たく、こいつのせいで。

 と、機嫌の良い親友を見る。

「行くぞ、クソ紀治」

 胸の奥が痛くて、熱っぽくなったのは、腹が立ったから。

 そういうことにしよう。

-緑川凛太郎−

ショート小説コンテスト

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