『サンタクロース~試験~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト25

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『サンタクロース~試験~』

「次、396番、山田」
「あ、はい…」
モデルハウスの前に立った。最近のトレンドでは玄関から侵入が多いらしく、そのためか仲間にもピッキング技術に長けた者もいたが俺はそんな技術には頼らない。昔ながらに煙突からの侵入がカッコイイと思っている。
しかし家の周りをぐるりを周ってみるが、どこから入れば良いか見当もつかない。
「すみません、脚立を使っても良いですか?」
教員たちは唖然としたが、一度咳払いをしてから小さく頷いた。
俺は脚立を使って屋根に上り、そこから煙突に入る。
煙突からの出入りは音を立てないことが鉄則だ。ゆっくりと蜘蛛のように両手・両足を張り付けて移動する必要がある。そのため手足の筋力がかなり重要になってくる。
俺も基本通りゆっくりと降りていく…が、途中で足が滑って尻もちを着いてしまった。
ドン、と大きな音を立ててしまう。幸い、暖炉のある部屋と子供部屋は離れていたらしく、起きはしなかった。
お尻についた煤(すす)を払ってそろりそろりと(途中で板を軋ませてギ―っという音をさせながら)子供のいる部屋へと向かう。
扉を開けるとそこは子供の一人部屋のようで、部屋の隅のベッドで男の子がすやすやと寝ている。
俺はメモを取り出し、男の子の希望プレゼント記入欄に「最新の面白いおもちゃ」と書かれていることを確認した。
“面白いもの”とはなんだろう。そして“最新の”おもちゃなんて俺は持っていない。
悩みながら袋の中を探る中で、袋の中から一つの箱を見つけた。
なんの箱だったか忘れてしまったので、何か面白いものだと良いなあ、と思いながら開けてみると、中から出てきたのは昆虫のソフトフィギュアだった。
「ぎゃああああああああ!!!」
“驚かせられるもの”というリクエストのときに備えて買っておいたものだったが、俺が驚かされては意味がない。
「う、うーん…」
枕元で大きな声を出してしまったせいで、男の子も何ごとかと目を覚ます。
「え、なに!? ぎゃああああああ!!!」
子供にも通用するおもちゃで良かったなあ、と思いながらへらへらしていると
「実技試験を終了する。山田、言わなくてもわかると思うが不合格だ」
先ほどの試験官の声がした。どうやら別室で試験官が監視していたようだった。
「あ、はい…」

今年も落ちた。やはり俺もピッキング技術を学んだり、トレンドのおもちゃを仕入れるべきなのだろうか…

-白川湊太郎−

ショート小説コンテスト

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