『初雪~ノンフィクション~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト27

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『初雪~ノンフィクション~』

初雪が降ると、真っ赤な血を思い出す。
白が赤に染まっていく光景を今でもフラッシュバックする。

僕の地域では雪が降ることはたまにあっても、積もるなんてことは殆ど無い。
その日の朝、家を出ると夢を見ているかのような白銀の世界が僕の目の前に広がっていた。僕は知らなかったが、夜に初雪が降っていたらしい。
集団登校で集まるとみんなが各々に雪だんごを作り、即席雪合戦が始まる。
学校へ行くと校門にはさらにテンションが上がる張り紙がしてあった。

『本日は特別授業!全員校庭で遊ぶこと!―校長先生より』

運動場には先に登校していた生徒たちが遊んでいた。先生たちも一緒になって遊んでいる。
僕たちはなるほどと勘付き、荷物をひとどころにまとめ、思いっきり走った。

今の時代では考えられないだろうが、校長先生は授業よりも大切なものがあると常々言う人格者だった。僕も含めて生徒たちはそんな校長が大好きだった。

かまくらを作るものもいれば、どれだけ大きな雪だるまを作れるかを競うものもいて、各々の好奇心が爆発していた。その中で僕は面白い遊びは何かを真剣に考え、一つの考えに行きつく。
『裏庭にある坂道を凍らせてスケートリンクにしよう。』

思いついたら即行動。粟井と西ちゃんを誘い裏庭へ走った。
裏庭には誰もおらず、教師もいなかったため咎める人がいなかった。
僕らは近くにあった防火用水の水を坂道にぶちまける。見た目は雪がびちゃびちゃになっただけだが、時間が経てばまた凍り、滑りが良くなるはずだ。
「なぁこんなので本当にスケートリンクできるのか?」粟井は僕に聞いたが、多分昼過ぎには出来るよと答えた。

昼休みにみんなと話していると噂はすぐに広まった。
早々に飯を食い終え、裏庭へ行くと見事にツルツルのリンクになっていた。
僕含め、20人ぐらいの男子が我先に上から下へと滑り出す。

しかし10分も経たないうちにその事件は起きた。
僕の後ろにいた洪(ホン)君が滑り出した時、その時なにを考えていたのか、
僕は洪君を坂道を下り終えたところで抱きしめたのだ。

すると、洪君は体勢を崩し、僕の腕からするりと抜け、顔面を強打した。
みるみる内に僕が作った初雪リンクは赤色に染まっていき、洪君の前歯が欠けていた。
「大丈夫?大丈夫?」気温とは裏腹に僕の体温は急にあがっていった。

僕はすぐに洪君を連れて保健室に連れて行くと、教師もすぐにやってきた。
「何があったんだ?」
と僕に聞く小池先生はかなり高圧的で、すぐに喋ることが出来なかった。
泣いている洪君は日本語があまり分からない。僕は嘘をつく事も出来ると咄嗟に思ったが、胸が苦しくなったのでやめた。
「洪君の力が急に抜けたんだ。僕は捕まえられなかった。」
小池先生は意味がわかっていない。僕も何て言えばいいかわからなかったので、矢継ぎ早にくる質問に1つ1つ答えていくしかなかった。
スケートリンクはみんな楽しんでたし、洪君は自分で勝手につっこんで転けた。
僕がいたことが直接的な原因ではない。突っ込んくる車が洪君で、僕が電柱みたいなもんだ。
だからなのか、でもなのか、あの時『ごめんなさい。』という言葉が出なかったんだ。

あの時、洪君に言わなかった言葉が、僕の中で汚い固まりになった。
それは雪が降ると溶けて脳に染み出てくるようインプットされている。
白が赤に変わる風景を何度もフラッシュバックさせるんだ。

-黒川洸太郎−

ショート小説コンテスト

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