『ゴミ箱〜価値を分ける〜』白川湊太郎-ショート小説コンテスト30

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『ゴミ箱〜価値を分ける〜』

ゴミ箱は存在価値のないものを入れる場所でもあり、入れた物の存在価値をなくしてしまう場所でもある。

一枚の写真を持っていた。数ヶ月前まで付き合っていた彼女との写真だ。二人で旅行に行ったとき、たしか有名な神社の前で撮ったものである。二年半の交際期間中にやりとりしていた手紙は捨ててしまったが、この写真だけは最後まで残ってしまっていた。正直に言うと、私は今でも前の彼女に未練がある…

そんな私にも新しい彼女ができた。女性からの半ば強引なアプローチがあってのことだったが、私が次に進むきっかけを与えてくれたので感謝している。だからいつまでも引きずっているわけにはいかない。それに前の彼女の写真を大切に持っていながら新しい彼女と付き合うという背徳感に耐えられる気がしなかった。

私の部屋のゴミ箱は見た目が大きな木の箱のようであり、一見するとお洒落なインテリアの一部にしか見えなかった。こんな美しいものが、価値のない物を取り込んでいると考えると少し恐怖を感じた。

その瞬間を見ないように、目を瞑りながら手を伸ばす。

スウィング式の蓋がついたゴミ箱であった。蓋つきのゴミ箱は部屋の中とゴミ箱の中が区切られているため、ゴミ箱の中と外との価値の有無が更にはっきりと分けられている気がした。
右手でゴミ箱に入れる瞬間の左手は手持ち無沙汰になったために固く握られていた。
写真が底に着いた音を聞いて、価値がなくなり自分に必要ないものになったと実感した。
ちなみに写真は破らずに内側へ折り曲げて捨てた。これら価値がなくなったものは、どうせ燃える運命なのだ。わざわざ自分で手を下すことはなるべくしたくなかった。
内側へ折り曲げた理由は、明日ゴミ袋を取り出すときに写真を見ないようにするため。そして、写真の二人が綺麗なままでいられるようにするためだった。

―白川湊太郎-

ショート小説コンテスト

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