『ノート〜きっかけ〜』白川湊太郎-ショート小説コンテスト30

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『ノート〜きっかけ〜』

「じゃあ今日は教科書の35ページから始めるぞー」
世界史の先生が教科書の内容を黒板に書き写し、生徒が黒板に書かれた内容をノートに書き写す。ただそれだけのつまらない授業。だから別にノートを取らなくても、先生が授業で取り上げた部分を教科書にチェックするだけで問題はないはず。不満を抱きながらも必死に黒板を見てノートに書き写す作業を繰り返しているのはテスト終了後に板書したノートを確認するからで、仕方ないと割り切っているようだった。
〇〇年 △△戦争
□□年 ××革命
書いている途中で手を止めて、チラっと隣の席を確認する。
黒板の内容を必死に書き写している男の子。
横の席だと首が上下に動く様子をしっかりと確認できる。
真剣に授業を受けている横顔はとても素敵に思えた。
再び私はノートに視線を戻し板書を再開したけれど…すぐにやめてしまう。
特に何も考えずに下を向き、ただただペンを持つ手を動かさなかった。
「じゃあ次は〇△制度について」
しばらくして授業が別の内容になったところで、もう一度ペンを動かす。
さっき書かなかった部分は少し多めにスペースを空けておいた。
チャイムが鳴り授業が終わる。教室から出て行く直前に先生が大事な言葉を残してくれた。
「もうすぐテストだから、しっかり復習しておくように」
先生のこの言葉を待っている自分がいた。ようやく話しかけることができる。
私はさっきまで真剣に板書していた隣の席の子に声をかけた。
「あのさ、授業で書き写せてないところがあるから、ノート貸して欲しいんだけど…」
毎日の授業で少しずつ積み重ねてきたスペースを申し訳なさげに開いて見せる。
元は教科書を書き写しただけのことなのでノートを貸してもらう必要はないのかも知れないけれど、私は「いいよ」と言われることを、机の中にしまいかけたノートが取り出されることを待っていた。

お返しにノートでもプレゼントしようか
勝手にお揃いで使ってみようか
バレずに使い切ったら両想いにはなれないだろうか

-白川湊太郎−

ショート小説コンテスト

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