『ノート〜気が進まない〜』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト30

スポンサーリンク



『ノート〜気が進まない〜』

息子からエンディングノートを貰った。
便利な時代になったものだ。
銀行の暗証番号や判子の在処。家系図から、自分の意識が無くなった場合などなど。
このノートのフォーマット通りに記入すれば、死後残された者たちは困らないらしい。

「お父さんもこうゆうことを考える歳なんかなと思って。」
と70歳の誕生日プレゼントとして渡す息子は何を思っていたのだろうか。
少なからず私とは目を合わせていなかったように思える。

息子は私の死後をもう見据えている。
そうゆう現実主義的な息子を見て、私に似て合理的な考えになったなぁと思う。
息子の考え方が理解できればできるほど、このノートを記入する事に気が進まなくなった。

たまに実家に帰ってきては、「どうあのノート?」と尋ねてくる息子。
「暇な時に書くわ。」と何故か気を遣う。
「ばあちゃんが生きてる頃は毎日日記つけてたから、あーゆうの埋めるの好きかなぁと思って。」
と、前回とは言い回しを変えてきた。

ばあさんが生きてた頃の日記は大変楽しかった。
なにもない日々でも何かを感じ、何かを記していた。
結局私の人生はばあさん有りきで成り立っていたんだなぁと知る。

みんなが助かるのは分かる。息子の気持ちも考え方も分かる。
ただ、自分の人生を終わらせるノートというのは気が進まない。
とても合理的で大切な意味を持つノートなのだろう。

ノートというのは日々を記したり、思いついた事や、自分の考えをまとめたりするもので、面倒で、楽しくて、飽きやすくて、性格がもろに反映されるものであって、、、
こんなフォーマット化された合理的過ぎるノートを、合理的な理由で、合理的に書く。

私は仕事も家庭も要領良くやってきた方だと思う。
要領の悪い息子をよく叱っていたのを思い出す。
でも、なぜか気が進まない。何か違う気がするんだが、
『なぁばあさん。相談に乗ってくれよ。』

-黒川洸太郎−

ショート小説コンテスト

にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ  

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA