『床屋〜主人公と脇役の世界〜』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト31

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『床屋〜主人公と脇役の世界〜』

『誰もが自分が主人公だと思っているのは当たり前のことで、脇役に撤している人生でもそれが自分目線のドキュメンタリー映画である。』

そんな哲学めいたことを考えながら、大きな鏡越しに見る自分の顔はなんだか能面で、あぁなんで主人公がこんな不細工な顔してるんだろうなぁと嫌になる。
何をやっても似合わないこの髪の毛も設定としてはおかしい。正解に導くのが美容師であり、主人公の髪の毛がダサいなんて見たことも聞いたことも無い。

前髪を切ってもらうタイミングであるチャレンジをしてみた。少し目を閉じて意識を集中させる。『私は主人公ではない。私は主人公ではない。』そう心の中で10回唱えてみた。

目を開けると鏡越しにいたはずの自分が居なくなっていた。美容師さんは誰かの髪の毛を一生懸命切っている。
美容院からカメラはだんだん俯瞰になり、横の国道が映り、街全体が映し出された。
そこは誰からの目線でもない世界。感情も実態もない世界。みんなが無機質に動きまわっているジオラマのような世界。
これ以上、俯瞰視していくと危険だと脳が感じ取り、地球、宇宙と一瞬で駆け巡った後、意識を取り戻した。

また、不細工が鏡の前に現れた。
さっきより髪の毛が短くなり、より不細工が際立っていた。
現実は厳しい。『宇宙から見たら大した問題じゃないよ』みたいに、例え話を大きくする人もいるが、それは違う。
これが自分の世界だ。この見えてる範囲だけが動いている。
無機質にならないために、今日も生きる。

爽やかになった髪の毛をいじりながら、そんなどうでも良い哲学めいた事を考えた。

-黒川洸太郎−

ショート小説コンテスト

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