『森〜秘密基地〜』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト32

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『森〜秘密基地〜』

「なぁシンバル欲しないか?」僕が粟井にそういうと、
「欲しいな。」と即答した。

放課後、クレセントを少し緩めておいた音楽室の小窓を、トントントンと適度な強さで叩くと、カチャッとクレセントが開いた。
それは僕と粟井がいつも悪さをするときの必殺技だった。
少し回りを確認してから一気に教室へ忍び込む。窓を閉めることを忘れない。
音楽室からシンバルを盗むことなんて僕らにとっては造作のないことだった。
シンバルのセットを丸丸盗もうとする粟井に対し、僕は「片っぽだけで良いよ。」と言った。

誤算があったとすればシンバルは思ったより大きかったことだ。持ち出すには目立ちすぎる。
僕と粟井は目を合わせると、外へ通じる窓を開けた。二階から投げ落とす場所を探したんだ。
「あの木が良いんじゃないか?」そう言うと僕は一番近くの木にそっと投げ落とし、上手く枝にひっかけた。

その夜、僕たちは懐中電灯を片手に校社へ忍び込み、シンバルを回収した。
今までで一番の大仕事に胸がドキドキしていた。
「行くか?」「行こう。」

校舎裏の大きな裏山には僕たちの秘密基地があった。
暗い山道でも僕たちにとっては庭のような場所で、懐中電灯さえあれば全く問題が無かった。
一番大きな木の下にあるボロボロのソファは、粟井が自分の納屋から持ってきた代物だが、雨にぬれて風にさらされたソファほど汚いものはなく、オブジェとして重宝していた。

「さてとどこに飾ろうか?」
僕は懐中電灯を指差し棒の様に使い、場所を指し示す。
ちょうど良い木を見つけると、粟井が素早く動いた。「ここが良い。」
盗んだシンバルを枝と枝の間に固定した。
それは、敵の侵入を味方に知らせるものや、飯の時に仲間を呼ぶ道具にも見えて、想像力が男心をくすぐった。

「おにぎりも持ってきたんだ」
そう言って僕はタッパを開けて見せた。
「うそ!ええの?」と聞く粟井に「あたりまえやん。」と答えた。
普段なら全然量が足りないのに、僕たちは気分だけでお腹が膨れた。

「次はいい感じの机がいるな。」

-黒川洸太郎−

ショート小説コンテスト

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