『森〜凝縮〜』白川湊太郎-ショート小説コンテスト32

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『森〜凝縮〜』

私の好きな声優さんがラジオでブロッコリーのことを“凝縮した森”って言ってた。
なるほどね、たしかにグッと敷き詰められた森みたいな野菜だ。
あ、うん。見れば見るほど食べたくなくなってくるよ…
「またブロッコリー残して! ちゃんと食べなさいって言ってるでしょ!」
こうやって高校生になった今でも、野菜を残そうとしてお母さんに怒られているんだ。
他の野菜はほとんど食べているんだから、ブロッコリーくらい多めに見てくれないかな。
私は“凝縮した森”を上から眺めた。なるほどね、森だわ。ぎゅうぎゅうの、いっぱいいっぱいの森だわ。こんなにぎゅうぎゅうだとリスや小鳥も暮らせないだろうなあ。

私がフォークで森を少しずつちぎっていくと、森は林になって、林は木になった。
「あんた、食べ物で遊んで! ちゃんと残さず食べるんでしょうね?」
木まで小さくなったブロッコリーを一口だけ食べてみる…やっぱり青臭くて苦くて、つぶつぶが気になって、なんだか森を食べてるみたいでやっぱり無理だった。
「そんな嫌な顔してもダメよ。全部食べなさい」
私は食べることを諦めた。ブロッコリーをどこかへ隠してしまいたいと思った。
“木を隠すなら森の中に”ということわざがあるけれど、この森は凝縮され過ぎてて、木を隠す場所などなかった。そうだ、家のそばの公園に持っていこうかな。あそこなら木もたくさん生えてる。“木を隠すなら木の中に”よし、これでいこう。
「ちょっと、あんたブロッコリーをティッシュに包んでどうするの!」

やっぱり食べなきゃダメみたいだ…

-白川湊太郎-

ショート小説コンテスト

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