『エスパー~無力~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト33

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『エスパー~無力~』

「次の駅で女子学生が2人、男性サラリーマンが1人乗ってくる。」僕がそう予言すると、
「何でそんなこと分かるの?」と10歳の息子が尋ねた。
「みんなには黙ってたけど父さんはエスパーなんだ。」と言うと、息子は半信半疑の顔で次の駅を待っていた。

次の駅に着くと派手な女子高生2人と、くたびれた男性サラリーマンが乗車してきた。
「お父さん凄い。なんで分かったの?」息子は静かに驚いている。
「言ったじゃないか。お父さんはエスパーなんだ。」僕はしてやったりの顔をした。
「ふーん。まぁいいや。とりあえず信じてあげる。」息子はこの歳で父親を適当にあしらっている。

次の駅に着くと息子が言った。
「エスパーはさ、他に何が出来るの?」
「スプーン曲げとかじゃないか?」
「それって誰かの役に立つの?」なかなか鋭い事を言う。

また、次の駅に着くと、また息子が言った。
「空き地に捨て犬がいるんだ。エスパーならどうする?」
それがフィクションなのかノンフィクションなのか分からない複雑な問いにエスパーは迷った。
「元気が出る呪文を唱えてあげるかな。」少し冗談めいて応えるも、息子の横顔は冷めている。
「それで?」僕はうろたえた。
「それでもなにも、それだけさ。うちはマンションだから犬を拾うことも出来ないし、餌を与えたとしても毎日できることじゃない。」
「まぁ現実はそうだよね。」どこか息子は悲しそうだった。
今は冗談で返すとこじゃなかったのかもしれないと僕は反省した。

到着駅に着き席を立つと、息子が言った。
「ねぇお父さん。なんで次の駅で乗ってくる人が分かったの?」僕はうろたえ、一呼吸空けて応えた。
「先週の土曜日もこの時間のこの電車に乗ってたんだ。高校生もサラリーマンも大体決まった行動パターンを取ると思っただけさ。」
「ふーん。まぁ現実はそうだろうね。」
エスパーはいなくなった。
息子はどこか、してやったりの顔をしていた。

-黒川洸太郎−

ショート小説コンテスト

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