『エスパー~末路~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト33

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『エスパー~末路~』

「さあ始まりました人気エスパーの頂上決戦、1分間にいくつのスプーンを曲げられるのでしょうか?」
ステージには3人のエスパーが並ぶ。色鮮やかなシャツを着て観覧車に愛想をふりまく男性、黒いマントに身を包み多くを語らないミステリアスな雰囲気をした女性、正体不明という設定で仮面を被っている者も。それぞれ特徴のあるキャラクターをしている。
「それではいきますよ。用意スタート!」
一斉にスプーン曲げを始める。3人ともテンポ良くスプーンを曲げていき、その様子に観覧者は歓声を上げる。プロデューサーも面白い番組がなりそうだと嬉しそうだった。

そんな中で一人だけ愚痴を言ってばかりの男がいた。
「あの子、雑念が入っちゃってるね~」
「あいつ、本当にエスパーなのかよ」
ステージの裏でモニターを見ながら出演者を馬鹿していた。
結局、その番組内では黒いマントの女性が1分間で13本ものスプーンを曲げて優勝となったが、舞台裏の男は「俺が現役だったころは20本はいってたね」などと大口を叩くのであった。

近年はオカルトブームのためか、たくさんの番組でエスパーを見かけるようになった。エスパーにとっても1回のテレビ出演で、ショーを行うのが馬鹿らしくなるほどの金が手に入るため、テレビ出演はエスパーであれば誰もが求める環境であった。

そして今ステージ裏にいるこの男も、かつてのエスパー人気の恩恵にあやかった一人である。彼にはエスパーとしての実力があり、テレビに引っ張りだこの時代があった。特に彼のスプーン曲げには誰もが驚いた。ただ超能力を力任せに使うわけではない、曲げる角度も調整できるのだ。
しかし次から次へと若いエスパーは現れる。今では男もテレビの出演など一つもなかった。それではなぜ彼がテレビ番組の収録現場にいるのか…

番組が終わり、撤収作業を始める。プロデューサーは足元に箱を見つけた。中には曲げられたばかりのスプーンが入っている。プロデューサーはあごで箱を指して、近くを通りかかったADに「おい、これ持っていけ」と指示をした。ADはすぐに理解して、箱を持って男のところまで持っていった。
「これ、今回の分です」
「お、ご苦労さん…ったく、どれも乱暴に曲げやがって」
そういって男は曲がったスプーンを1つ取り出して強く念じると、曲がっていたはずのスプーンは元のようにまっすぐになった。
「こうやって柄の部分と掬いの部分の境目を持って、雑念を消して一点に集中すると曲げられるんだ…」
男は嬉しそうに話していたが、スプーンを届けたADはすでにいなくなっていた。

これが売れなくなったエスパーの末路である。

―白川湊太郎―

ショート小説コンテスト

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