『運動会~社内運動会(笑)~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト35

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『運動会~社内運動会(笑)~』

 俺の友人である左坤(さこん)くんは、足が速い。
 いや、俺が遅いだけかもしれないけど。
 彼は、いつも動きがゆっくりで、足も遅そうなのに。
 走るとなると、ものすごく速い。

 先日、俺の会社の社長が突如「運動会しよう」て言い、俺は全力で嫌がったが。やることになった。
 あれは酷いものだった。
 大体平均年齢が三十という野郎の集団が、運動会って可笑しいだろ。
 なぜ、誰も突っ込みをしない。
 と、思っている間に運動会は始まった。

「えっと、チームがどういう分け方なの?」
 俺が社長に訊くと、社長はニコッと笑う。
「よくぞ聞いたな! 糞人間! くゎぁあむぃぬぉおおおおおお!!!」
「うるせえよ。じじい」
「口が悪いぞ! 文(あや)ちゃんっ」
「お願い、くたばって」
「くたばりませんわ!」
 社長はウザいくらい笑いながら、俺の肩をポンポンと叩く。
「チームは、俺と優馬(ゆうま)で分けてるから。引馬(ひくま)さんは医療班で参加しないし。尺度(さかと)さんは持病のため、走れないというので二人は参加しません」
「尺度さん、病気ありすぎじゃない?」
 てか、いつもこういうとき参加しないよな。
 どんな病気だ。
 と、考えていると、俺と腐れ縁のような友人、紀治(としはる)が「文人(あやと)」と声をかける。
「触れちゃあいけない」
「あ、そう」
「もうね、尺度さんのことは見て見ぬ振りをしないと。やばみを感じて、辛くなるから」
「……確かにな」
 どんな事情があるにせよ、幼児退行ってえぐいよな。
 俺は小さくため息を吐いて、社長を見る。
「んで? チームは? 決まったの?」
「決まったよ! 俺のとこは、梔(くちなし)紀治、三十三歳! 柳楽(なぎら)英忠(ひでただ)十九歳!!」
「え、ちょっ! てめえ、ずりぃわ!! こっち、不利じゃねえかよ!」
 左坤くんは、行動が遅い。
 小鳥遊(たかなし)くんは、未知。
 俺は普通。
 なあ、これで徒競走とか勝てるか?
「左坤くんも何か言いなよ! あいつ、左坤くんのこと馬鹿にしているぞ!!」
「え、」
 左坤くんは俺を見たあと、社長を見る。
「馬鹿にしている…? え、やだ。ちょっ、無理」
「あ、あの。泣かないでね? 左坤くん。絵面が酷くなるから。君、可愛い系だけど、二十四の男が泣くの辛いもんがあるから」
「愁哉(しゅうや)のチームを地獄に落とそう…」
「何、怖いこと言ってるの。やめて」
「小鳥遊くん、やろう。いや!! ……殺ろう」
「ためるな! ためてから、話すな!」
「オーケー。左坤さん」
「小鳥遊くんも、殺る気にならないで」
 待って。
 俺、本来ボケじゃん。
 何で突っ込みを…。あ、本来突っ込みのやつがボケだしたからか。
 くそ、何かムカつくな。
 俺はイライラして、相手チームを睨んだ。

 そして、そんな感じで始まった。
 運動会というのだから、何か色々やると思った。
 しかし、俺らはおっさん。
 半数が三十超えているという、まさかのことが起きているから。
 最初のリレーで、全員くたばった。
 運動不足だしな、みんな。
 基本、社内でぼんやりしながら仕事しているからな。
――馬鹿だろ、みんな。
 勿論、俺も。

 さて、そんなリレー。
 どんなものだったか、というと(大体、最初にリレーをするのどうかと思う。最後だろ、普通)凄いものだった。
 順番的に、チームのリーダーは最後。あとは、年齢順となった。
 だから、最初は最年少である小鳥遊くん、柳楽くんが走ることになった。
 ここで、小鳥遊くんが俺にバトン渡しながら転ぶという事故が起き、引馬さんが「大丈夫か!!」と父親のように走って、養護コーナーに連れていった。
 俺の少しあとに紀治がスタート。
 絶対に負けられない戦いがここにはある。
 そんな気持ちで走った。
 が。
 左坤くんに渡すとき、俺と紀治は並んでしまった。
――負けた。
 そう思い、諦めかけたときだった。
 左坤くんが「このキ○○イが!!」と社長に言いながら、走るという。
 まさかのことをしだした。
 短めのトラックを、アンカーは一周するのだが(俺らは半周)。
 その中で、彼は何度ピー音の入ることを言ったのだろうか。
「○ね! くたばれ! この死に損ないがぁ!!!」
 いつもの可愛らしい印象の左坤くんはいなかった。
「われ、いつも寝るときだけくっつくのやめろや!! わしのことをわりゃぁ何じゃゆぅて思うとるん!?」
 左坤くん、色々とアウトだ。
 と、俺らが思っている間にゴール。
 社長は、左坤くんからの罵声(?)で死にかけていた。
――そりゃ、死に損ないが、とか言われたもんね。
 俺は社長の肩に右手を置き、左手で金のマークを作り、ニコッと笑う。
「ね?」

 こうして、一名精神的に死亡するということで、運動会は終わった。
 ゴールしたときの左坤くんは、とても良い笑顔で「軽く走ったけど気持ちが良いね!」と言った。
 あとで知ったが、彼は五十メートル走の記録が五秒台らしい。
――普通に走っても、勝てたんじゃないか?
 と、俺は思い、たまには左坤くんの愚痴を聞いてやろうと決めた。

 あ、運動会後の飯は社長ってか社長チームの奢りだった。
 だから、全力で高い物を食べた。
 高い焼肉は、とても美味い。

―緑川凛太郎―

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