『月~向こう側から~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト44

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『月~向こう側から~』

「大気圏突入、着陸まで3、2、1……着陸完了」
乗って来た機械が開いて中から顔を出す者がいた。
「ここが地球か」
夜だった。何があるのかわからないほど真っ暗であったが、実際に何もなかった。
遠くの方で何かが飛んでいるようにも見える。
「あれって」
空を見て、声をあげる者がいた。その先では白くて丸い物体が空に浮んでいた。
「あれが月なのか」
「そう、私達の星だ」
「綺麗だな」
「本で見たものよりもずっと綺麗だ」

地球の探索は順調に進んでいた。植物を採取したり気候の観測を行った。大柄な四つ足の生物は焼いて食べることもした。仕事ではあったが全員が地球での生活を楽しんでいた。

月へ帰る当日の夜、彼等は重大な問題に気がついた。
想像以上に地球の重力が大きく、全員を乗せて帰ることができなかったである。
「俺が残るよ」
話し合いするまでもなく、一人が手を挙げた。
「調べ甲斐がある星じゃないか、なんとか順応してみせるさ」
明るく振舞う様子は、あながち嘘ではないようだ。
「すまない、必ずまた迎えに来るから…」
「来られなくても地球の文明を発達させてみせる。いつか俺の子孫が月にいくかもしれないぞ」
別れの直前まで楽しそうに会話をする仲間たち。
地球の自転と公転を考慮すると、発射する時間はもう迫っている。
「じゃあ、な」
「そうだ、星の者たちに私の言葉を伝えて欲しいんだ…」
「ああ、なんでも言ってくれ」

大きな機械が重力に逆らい月へ向かう。
「みんな元気でな…」

無事に帰還できた者たちは会見を開いた。
「最後に、トラブルによって地球に残ることになった彼の言葉を伝えたい」
リーダーは目を瞑り、仲間と共に見た景色を思い出した。
「月は白かった」
この言葉は月に住む者たちの間でも名言として語り継がれることとなった。

―白川湊太郎―

ショート小説コンテスト

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