『ジャンクション~幸福の連鎖~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト46

スポンサーリンク



『ジャンクション~幸福の連鎖~』

補修が入り5限の授業が終わる。ふと見上げると通り雨がざぁざぁと降っていた。
僕はこの前サークルの歓迎会の際、ビンゴの景品で当たった60cmの折りたたみ傘をたまたま鞄に入れていた。

傘を差し、連れも先に帰っていたため仕方なく一人で駅まで歩く。
耳がさみしいのでIphoneで音楽をかけBluetoothをオンにする。
うるさい音楽を聴きたくなかったので80年代のフォークでもかける。

傘を買っているのか購買には凄い列が出来ている。
校門をくぐる時少し振り返ると、雨の中傘もささず蹲っている女性がいた。
連れがいれば何事もなく通り過ぎる僕だが、一人だということもあり気が大きくなったのか。

「大丈夫ですか?」と声をかけ彼女に傘をかけてやる。
顔を上げた女性は驚いた表情を見せ、「なんでもありません。すいません。」とだけ言い、校舎の方へ走って行った。
黒髪のショートが似合うとても綺麗なひとだった。
僕は恥ずかしさで熱を持ち、走っていく彼女の後ろ姿に見惚れているとカバンから何かが落ちた。
僕は考えるよりも早くその場所に行き、落ちた物を拾うとそれは小さな白の手鏡だった。
僕は姿が消えた彼女を追いかけることはせず、そのまま家路につく。

次の日もその次の日も僕のカバンには彼女の手鏡が入ったままで、
授業の合間を見つけては僕は校舎内を練り歩いていた。
結局1ヶ月僕は何の手がかりも入手できず、いい加減自分自身が気持ち悪いなと思いだして、校門の前に手鏡を置いて帰ることに決めた。

あの時、補修がなければ。
ビンゴで傘が当たらなければ。
連れが先に帰っていなければ。

あの時のジャンクションはたまたま僕を正しい方向に導いてくれただけで。
現在の僕はたまたま間違った方向に入ってしまっただけで。

彼女は彼女であらゆる選択肢を辿り、
たまたま今、校門の前であの時傘を差し出してくれた彼を待っているのかもしれない。

ドラマの様な展開も、現実的な展開も、全ては状況の連鎖が幸運だったか。そうではないか。
あそこで笑ってるやつも、家でセックスしてるやつも、一人で校舎をうろうろしてるやつも
結局は戦時中のイスラム国で生まれたか、金持ちのドバイで生まれたかの違いのようなもので。

あらゆる運命の選択が僕たちをどこに運んでいくのか。
高速のジャンクションを見ているとそんな作り話が浮かんだ。

―黒川洸太郎―

ショート小説コンテスト

にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ  

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA