『ショベルカー~壊して欲しい~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト48



『ショベルカー~壊して欲しい~』

昼休み長江が俺のズボンをズラすとパンツも一緒に脱げた。下半身丸出しの状態を数人の女子に見られた。自分がこんなことをされるという事実がダサすぎて、女子からもそう思われたと思うと、顔が真っ赤になった。
長江が平謝りをしているが、僕は何も言わなかった。こうゆうアホにはノーリアクションで対応するに限る。変質者と同じだ。目で殺すのが一番効果的だと思ってる。
かと言って俺の腹の中の怒りが収まった訳でもなく、午後の授業から長江に仕返しする方法を考える。

靴を隠すのもいい。教科書を破くのもいい。『死ね』と手紙を書きおくのも効果的だろう。さてどうするか。先生にバレないように証拠が残らない方がいい。僕は放課後に勝負をかけることに決めた。

放課後、長江がまた誰かにズボンずらしを仕掛けているのを横目で見ながら僕は下駄箱へ急ぐ。まだ誰も居ない下駄箱から素早く長江の靴を見つけ出すと、用意していた体操服を入れる袋に靴をいれた。捨ててやるのは心が痛むので、長江が下校途中に見つけられるか見つけられないか微妙なポイントの溝を見つけそれを置いといた。清々しい気分がした。

次の日、長江の顔が楽しみだった。教室に入って真っ先に顔を見てやると驚くことに右頬が腫れ上がっていた。どうゆうことかを考えた。靴を無くして親父にボコられたのだろうか。だとしたらそれもまた嬉しい。

横で女子のひそひそ話が聞こえる。
「長江くん高橋に殴られたみたいだよ。高橋普段大人しいのにやるときはやるんだね。」
僕は驚嘆した。スクールカーストでは僕と同等か、それ以下だと思っていた高橋が長江を殴った。高橋をみると何故か一皮剥けたような顔をしている。

女子たちは続ける。「昨日の放課後に長江がまた調子に乗ってズボンずらしをしたんだって。それで高橋がキレて殴ったんだってさ。それで保健室に長江が運ばれて高橋は職員室に呼ばれたんだけど、ちょっと高橋のこと格好よく感じちゃった。」
僕は想像する。保健室から意気消沈に帰ろうとした長江は靴が無くてどんな気持ちで帰ったんだろう。

帰り道、近くの廃ビルがショベルカーによって壊されていた。
『有るものが無くなる感覚』が気持ちいいのは何故だろう。
高橋は長江を殴って気持ちよかったのかな。
僕は自分の陰気さを呪い、この気持ちを壊してくれる何かを探している。

―黒川洸太郎―

ショート小説コンテスト

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