『ショベルカー~埋葬~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト48



『ショベルカー~埋葬~』

 今まで生きてきた二十数年で唯一友人と呼べる彼とは、中学からの同級生である。彼は今も不思議な人だが、当時もかなり不思議だった。
 授業は真面目に受けているのに、成績は悪かったり。
 誰にでも優しくて、男女ともに人気があるのに、色恋沙汰は特になかった。
 授業は実は聞いていなくて、恋愛には全く興味ないのでは? と思ったが、そうでもなかった。
 俺も男女ともに人気がある方だったから、何となく女子に聞いてみると「鷲海(わしのうみ)くんって、お化けとか見えるらしいから、怖いんだよね」と言われた。
 なるほど、オカルトが好きな女子でも、リアルにそういうことがあると怖いんだな、と当時は思い、軽く礼を言って彼の元に行った。
「鷲海~」
 と声をかけると、彼はニコッと笑い「何だ?」と言う。
「お前から声をかけてくるのは珍しいな、大江(おおえ)」
「まあね」
「で、何? 今日のパンツは灰色だよ?」
「要らない情報をありがとう」
「はは」
「いや、そんなことよりさ。お前、お化けとか見えるの?」
「ん? ま、見えるけど。どうかした?」
「ううん。何となく」
「そう」
「じゃ」
 と離れようとしたとき、チラリと彼の腕に傷があるのが見えた。
 そんなに激しく動くタイプではないから、どうかしたのだろうか、と心配になり「それ」と傷を指すと「ああ」と彼は言う。
「昨日、料理をしようとしたらミスったんだ」
「それで腕を切るか?」
「俺だよ? 大江」
「確かに、お前だな。鷲海」
 俺は頷いて、彼から離れ、自分の席に着いた。

 その日の夜。
 買い物の帰り道。
 俺の家の近くには、だだっ広い空き地があるのだが、そこにショベルカーが一台停まっていた。
 そこに家とか建つのかな、と思っていたら、ショベルカーは動き出した。
「え」
 と見ると、ショベルカーには俺の友人である彼がいた。
 彼は地面を軽く掘ると、ショベルカーから降りて何かを中に入れた。
 そして、その上に土を被せるように入れた。
 それはまるで何かを埋葬しているかのようで、俺はゾッとした。
「わ、鷲海?」
 と彼の名前を呟くと、向こうにいるはずの彼が俺の傍にいて、ニコッと笑う。
「どうした、大江」
「っ!」
「何か見てはいけないものでも見たのかい?」
「ち、違う」
「じゃあ、どうした?」
「お、お前さ――」
 と言いかけたとき、俺は意識を失い、気がついたら布団の上にいた。

「ということなんだ、鷲海! 怖いだろ!」
 と、友人の大江は自信満々に言った。
 正直そんなに怖くないし、そういう夢はよくあるから何ともないのだけれど。
 それを伝えると、彼は酷く落ち込むから「怖かったよ」と優しく言い、怖がる振りをした。
 大江は嬉しそうに笑い「そうか!」と言う。
「いやあ、鷲海は聞いてくれるからな。俺も話す甲斐があるよ」
「ははは、そうかい」
「そうとも」
「ん。ところで、大江」
 俺は時計をチラッと見る。
「バイトの時間では?」
「あ! そうだった!!」
「…平木さんに迷惑かけんなよ?」
「わーっとるわい」
 大江はそう言うとお金を机上に置き、喫茶店から出ていった。
 俺は一人、コーヒーを飲みながらため息を吐く。
「ま、夢じゃあないんだけどね。大江」
 夢と言えば夢だけど、夢ではないと言えば夢ではない。
「事実は、俺とお前の位置は逆なんだぜ?」

―緑川凛太郎―

ショート小説コンテスト

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