緑川凛太郎の小説 一覧

『プレゼント~Merry X’mas~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト52

『プレゼント~Merry X’mas~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト52

『プレゼント~Merry X'mas~』  終業式の日。僕は、佐野(さの)さんに「今夜、空いてますか?」と訊かれ、空いているです、と頷いた。すると、佐野さんは笑って「じゃ、今夜は俺に時間をください」と言った。  そして、夜というか夕方。  今日は十二月二十四日。  一般的には恋人同士がイルミネーションを見たり、家族がサンタクロースの話をしていたりする日なわけで。  僕は地元―藁谷町(わらやのまち)駅の駅前で、佐野さんを待っていた。  真冬だということもあり、とてつもな...

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『将棋~対局~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト51

『将棋~対局~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト51

『将棋~対局~』 僕は、たまに将棋を指す。  趣味とまではいかないが、時間があったら指している。  相手は友人だったり、家族だったり。  今日も、仕事が思ったより早く片付き、指そうかと思っていた。  だが、僕の部屋から妻の「文(ふみ)くん! めっ!!」という声が聞こえた。そして、僕が部屋に行くと、息子が僕の将棋の駒を床に散らかしていた。 「おっと、これじゃあしばらくは指せないな」  と、僕が苦笑すると、妻は「あ、えっと」と少し慌てる。 「こら、文くん。お父さんがそれを...

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『暖炉~思ひ出~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト50

『暖炉~思ひ出~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト50

『暖炉~思ひ出~』  僕の母方の祖父母の家には暖炉があった。  その前には、揺り椅子があり、僕はよくそこで寝ていた。  祖父はそんな僕に優しく布団を被せ、祖母は燃えないように暖炉から揺り椅子を少し離した。  目を覚ますと、いつも暖炉の火は消えており、僕が申し訳なさそうにすると、祖父母は笑って「構わんよ」と言った。  少ししてから、父が「お義父さん、お義母さん」と薪を持ってきて、暖炉の中に放り、火をつける。 「お、優(ゆう)。目を覚ましたのか」 「おはよ、父ちゃん」 「...

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『ハゲ~閑話~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト49

『ハゲ~閑話~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト49

『ハゲ~閑話~』 「どうでも良い話なんだが、佑司(ゆうじ)。俺の親父は五十を過ぎて突如禿げ始め、五年後には髪がなくなったのだ」 「だから何だよ」  俺は従兄弟の悠生を軽く睨む。 「お前さ、どうでも良いとわかっているのならば、早朝に呼び出すなよ」 「いや、お前に聞いてほしくて。どうしても」 「どうでも良いんだろ?」 「そうなんだけどさあ。ほら、同じような遺伝子を持つお前なら、きっとわかるはずだと」 「……まあ、俺らはパッと見は双子だからなあ」 「名字と性癖くらいだよな...

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『ショベルカー~埋葬~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト48

『ショベルカー~埋葬~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト48

『ショベルカー~埋葬~』  今まで生きてきた二十数年で唯一友人と呼べる彼とは、中学からの同級生である。彼は今も不思議な人だが、当時もかなり不思議だった。  授業は真面目に受けているのに、成績は悪かったり。  誰にでも優しくて、男女ともに人気があるのに、色恋沙汰は特になかった。  授業は実は聞いていなくて、恋愛には全く興味ないのでは? と思ったが、そうでもなかった。  俺も男女ともに人気がある方だったから、何となく女子に聞いてみると「鷲海(わしのうみ)くんって、お化けとか見え...

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『くじら~給食~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト47

『くじら~給食~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト47

『くじら~給食~』  全くもって、意味のわからないことが起きていた。  その日というか今日、俺は仲良しの左坤優馬(さこんゆうま)くんと、佐々塚優(ささづかゆう)くんと遊ぶ約束をしていた。  場所は佐々塚くんの家だ。  彼は先日まで一人暮しだったが、最近は恋人と同棲していると言う。  その話を聞いて、俺は普通に「迷惑ではないか?」と言った。すると「平気」と彼は答えた。  だから、左坤くんと一緒に彼の家に行ったのだが。 「やあ、兄貴! 優馬くん!」  佐々塚くんはとてつも...

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『ジャンクション~岐路~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト46

『ジャンクション~岐路~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト46

『ジャンクション~岐路~』  高校を卒業して、ほんの少し経った時。  私は親から卒業祝として、中古車を買ってもらった。  トラックが良かったけれど、まだ大型の免許を取っていなかったから、取ったら買うことにした。  中古車に乗り、母校である藁谷町(わらやのまち)第二高等学校に向かい、恩師である佐野(さの)先生に会いに行った。  駐車場に止め、いざ行こうとすると前から佐野先生が歩いてきた。 「佐野先生っ」  私が声をかけると、先生はニコッと笑い「おう」と言う。 「どうした...

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『時間~廻り巡る~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト45

『時間~廻り巡る~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト45

『時間~廻り巡る~』  我らが藁谷町(わらやのまち)市は、とても穏やかな町である。  駅は昔ながらというか、他のところではあまり見ない木造駅舎。  ICカードというものは使えない。  電車を使うなら、駅員から切手を直接貰う。  僕の仕事は、それだ。  長いこと、この町の駅員を務めている。 「どれくらいの時が経ったのだろうか」  部屋を出て、ホームのベンチに腰を下ろす。  この町の人たちは、何だかんだで自分に優しい。  一日に一回は必ず顔を出してくれるし、話もしてく...

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『月~月見ウタ~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト44

『月~月見ウタ~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト44

『月~月見ウタ~』 今宵は十五夜。  俺ら百鬼出版社社員一同は、社長が住むマンションの屋上で月見をすることにした。 「神呪(かみの)さん! お酌!」  今年の五月に二十歳を迎えたばかりの柳楽(なぎら)くんが、慣れない手つきで俺が持つお猪口に酒を注ぐ。 「神呪さん、日本酒って美味しい?」 「あー、まあまあかな。俺は普段、チューハイばかり飲んでるし」 「チューハイ?」 「うめぇぞ、チューハイ。良い感じに酔える」  俺はニィッと笑い、社長を指す。 「気になるなら、兄に訊...

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『メモ帳~黒髪メモ帳~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト43

『メモ帳~黒髪メモ帳~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト43

『メモ帳~黒髪メモ帳~』  利一(りいち)は、よくメモを取る。  理由はたった一つ、忘れないためだと言う。  僕は利一とはずっと一緒にいるし、利一が忘れてしまっても、僕が覚えているから問題ないように思える。でも、利一は嫌だと言う。  綺麗なショートヘアーの金髪、少しつり目で、アイラインを引いたような金眼をキラキラと太陽に輝かせて、風に靡かせて利一は優しく僕に言う。 「英忠(ひでただ)のことも、僕は忘れてしまうから」  普段の利一なら、きっと言わないことをこの時の利一は言っ...

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