白川湊太郎の小説 一覧

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『ジャンクション~見えない~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト46

『ジャンクション~見えない~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト46

『ジャンクション~見えない~』 トラックの運転手というのは退屈だ。 毎日毎日同じルートを行ったり来たり。ほとんどの時間は単調な高速道路を走っている。 この日もいつもと同じルートの高速道路を走っていたが、ある地点で視界に一羽のカラスが飛び込んで来た。 「うわっ、びっくりした……」 奴は私の元を離れるとすぐに舞い上がっていった。その先にはこの道路と立体交差したもう一方の道路があった。ここが道路と道路が立体交差するジャンクションであることをすっかり忘れていた。見上げたことで上にも...

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『時間~見える~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト45

『時間~見える~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト45

『時間~見える~』 毎月第三土曜日は全校集会が行われる。俺はこの時間がすごく苦痛だ。 ただ座っていれば終わるのだけれど...まだ教室で嫌いな数学の授業を聞いてた方がマシに思えてくる。 ざわつく体育館の中がだんだんと静かになっていく。壇上の校長の存在に気がついたからだ。 「えー、みなさんが静かになるまで約二分かかりました」 腕時計を見ながら話し始める。 「ここには約千人の生徒が集まっています。二分間×千人なので二千分も無駄にしているのです。みなさんは人の時間を奪ってい...

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『月~向こう側から~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト44

『月~向こう側から~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト44

『月~向こう側から~』 「大気圏突入、着陸まで3、2、1……着陸完了」 乗って来た機械が開いて中から顔を出す者がいた。 「ここが地球か」 夜だった。何があるのかわからないほど真っ暗であったが、実際に何もなかった。 遠くの方で何かが飛んでいるようにも見える。 「あれって」 空を見て、声をあげる者がいた。その先では白くて丸い物体が空に浮んでいた。 「あれが月なのか」 「そう、私達の星だ」 「綺麗だな」 「本で見たものよりもずっと綺麗だ」 地球の探索は順調に進...

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『メモ帳~瞬間~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト43

『メモ帳~瞬間~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト43

『メモ帳~瞬間~』 「そうなんですね! すごいなあ……あっ、メモを取ってもいいですか?」 上司からの返答よりも先にポケットからボールペンとメモ帳を取りだした。 「出たよ。飲み会の席ぐらい大人しく飲んでおけよ」 隣に座る先輩にからかわれても気にはしない。 「いやいや、そういうわけにはいかないんですって」 そう言いながら俺はメモ帳を胸の高さに構えて、一字も逃さないようにしようと見せるため身体を前屈みにする。上司はさっきよりも一段と嬉しそうな表情をして話し始めた。 飲み会での...

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『河童~お皿の深さ~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト42

『河童~お皿の深さ~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト42

『河童~お皿の深さ~』 「あの、もしよかったら僕と相撲をとってもらいたいんですけど」  丁寧な口調で話しかけてきたのは子供、ではなく子供の体格をした河童だった。 「きゅうりあげますんで」 「え、もうすぐ雨降るらしいから、早く帰りたいんですけど」 「そんなこと言わずに、きゅうりあげますんで」  河童はさもきゅうりが万人の好物であるかのように話している。 「じゃあ、一回だけですよ」 「本当ですか? ありがとうございます!」 土俵なんてものはなく、広い河川敷で行うことにな...

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『プール~見えたもの~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト41

『プール~見えたもの~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト41

『プール~見えたもの』 「おとうさん、プール!」 「わかってるよ」 「すげえ、おおきい!」 「だから、わかってるって」 息子をプールに連れてきたのは初めてだった。小学校では何度か入っていたようだが、民営の大型温水プールを目の前にした息子は大騒ぎだった。 「おとうさんみてて!」 息子が勢いよくプールの中に飛び込んだその瞬間、ピピピッ、と大きな音が笛の音が響いた。 「そこ、飛び込まないで!」 監視員の男性がすぐにこちらへ来て注意をする。だが当の本人は飛び込んだ勢いそのま...

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『犬~序列~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト40

『犬~序列~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト40

『犬~序列~』 「犬、飼いたいんだけど…」 娘の塾と私の仕事、その両方の都合が良くて家族三人が揃った数少ない夕食の機会を狙って恐る恐る尋ねてみた。 「ええー。誰が世話すんのよ?」 「もちろんお父さんがするから」 「ん、なになに、お父さん犬飼うの?」 娘はテレビの方を向いたまま会話に参加してきた。食事中はテレビを観ないようにと保育園の頃から何度も注意していたが一向に直す気配がなかったため、中学校を卒業した時点で夫婦ともに諦めてしまった。 「そうみたいなのよ。自分で世話する...

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『映画~初デート~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト39

『映画~初デート~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト39

『映画~初デート~』 周りに座っている仲の良さそうな大人の男女を見ていると、僕と恵美ちゃんもカップルに見られているのだろうと思って嬉しくなったが、隣に座る恵美ちゃんはそれほど楽しそうな表情をしてはいない。 「映画、楽しみだね」 何を話せば良いのかわからずに場繋ぎの言葉を口に出してみる。 「そうだねー」 言葉とは裏腹で恵美ちゃんには共感するつもりがないらしく、つまらなさそうにスマホの画面を見ながら答えていて、僕はさらに不安になってしまう。 勇気を出してクラスで人気の恵...

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『望遠鏡~親子で~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト38

『望遠鏡~親子で~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト38

『望遠鏡~親子で~』 晴れた日の夜には無数の星が輝いている。それは人間が作り出した光の多くを排除できたからこそ見られるものだ。私は望遠鏡を通してこの星を眺める度に都会を離れて良かったと思う。 しかし、息子はそうでもない様で、いつも「ここはつまらない」とばかり呟いている。父親である私に付き合わされて田舎へと引っ越すことになったのだから。 「なあ、ちょっと見てみないか?」 「別に、いい・・・」 参考書から目を離さないまま返事が来た。こんな会話を毎日繰り返している。息子は十五歳。...

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『キャンプ~得たもの~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト37

『キャンプ~得たもの~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト37

『キャンプ~得たもの~』 「どうだ、楽しいだろ?」 友人に言われて「ん、まあ」としか答えなかった。 どうやら俺は都会に染まりきっていたようだ。何もかも手に入る環境で、何もかも手に入れようとして、全てを手に入れられなかった。そんなときに彼がキャンプに誘ってきたのだ。 俺は事前に予習をしておいた。キャンプでは「協調性」などが得られるらしい。これ以上まだ何かを得なければならないのかと思うと嫌気がさしていた。 当日は彼と一緒にテントを張り、魚釣りやバーベキューをした。といっても...

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