白川湊太郎の小説 一覧

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『犬~序列~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト40

『犬~序列~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト40

『犬~序列~』 「犬、飼いたいんだけど…」 娘の塾と私の仕事、その両方の都合が良くて家族三人が揃った数少ない夕食の機会を狙って恐る恐る尋ねてみた。 「ええー。誰が世話すんのよ?」 「もちろんお父さんがするから」 「ん、なになに、お父さん犬飼うの?」 娘はテレビの方を向いたまま会話に参加してきた。食事中はテレビを観ないようにと保育園の頃から何度も注意していたが一向に直す気配がなかったため、中学校を卒業した時点で夫婦ともに諦めてしまった。 「そうみたいなのよ。自分で世話する...

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『映画~初デート~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト39

『映画~初デート~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト39

『映画~初デート~』 周りに座っている仲の良さそうな大人の男女を見ていると、僕と恵美ちゃんもカップルに見られているのだろうと思って嬉しくなったが、隣に座る恵美ちゃんはそれほど楽しそうな表情をしてはいない。 「映画、楽しみだね」 何を話せば良いのかわからずに場繋ぎの言葉を口に出してみる。 「そうだねー」 言葉とは裏腹で恵美ちゃんには共感するつもりがないらしく、つまらなさそうにスマホの画面を見ながら答えていて、僕はさらに不安になってしまう。 勇気を出してクラスで人気の恵...

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『望遠鏡~親子で~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト38

『望遠鏡~親子で~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト38

『望遠鏡~親子で~』 晴れた日の夜には無数の星が輝いている。それは人間が作り出した光の多くを排除できたからこそ見られるものだ。私は望遠鏡を通してこの星を眺める度に都会を離れて良かったと思う。 しかし、息子はそうでもない様で、いつも「ここはつまらない」とばかり呟いている。父親である私に付き合わされて田舎へと引っ越すことになったのだから。 「なあ、ちょっと見てみないか?」 「別に、いい・・・」 参考書から目を離さないまま返事が来た。こんな会話を毎日繰り返している。息子は十五歳。...

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『キャンプ~得たもの~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト37

『キャンプ~得たもの~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト37

『キャンプ~得たもの~』 「どうだ、楽しいだろ?」 友人に言われて「ん、まあ」としか答えなかった。 どうやら俺は都会に染まりきっていたようだ。何もかも手に入る環境で、何もかも手に入れようとして、全てを手に入れられなかった。そんなときに彼がキャンプに誘ってきたのだ。 俺は事前に予習をしておいた。キャンプでは「協調性」などが得られるらしい。これ以上まだ何かを得なければならないのかと思うと嫌気がさしていた。 当日は彼と一緒にテントを張り、魚釣りやバーベキューをした。といっても...

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『信号~抵抗~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト36

『信号~抵抗~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト36

『信号~抵抗~』 「締め切り、明日ですよね?」 「だが明日は最終チェックのための予備日なんだぞ」 「作業も、チェックも、両方まとめて一日でやれますって」 「こういうのは時間を空けるからミスに気づけたりするものなんだ」 「部長、俺、今日はどうしても大事なイベントがあるんすよ」 「そう言わずに...ほら、今度飲みに連れてってやるから」 「えーまじすか、残業代出るなら考えますけど」 「えっ、残業代?」 「あ、でも俺、やっぱり今日は連れに会わなきゃなんすよ」 「連れって…...

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『運動会~見せ物~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト35

『運動会~見せ物~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト35

『運動会~見せ物~』 ピストルの音と共に第一走者が走り出す様子を、体育座りをした第三走者の俺が眺めている。運動会の最終種目は男子に一周二百メートル×四人のリレー。この勝負で優勝が決まるのだ。 リレーは花形競技だ。このスピード感で競っている様子を見て、観客たちはとても楽しく、頑張っている様子を応援していたいと思うだろう。 第二走者が最後のコーナーを曲がり、こちらへ戻ってくる。彼は野球部、クラスでも一、二を争う足が速さだった。第一走者と第二走者、二人の活躍により、俺たちのクラスが二...

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『食堂~惜しまれながらも店じまい~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト34

『食堂~惜しまれながらも店じまい~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト34

『食堂~惜しまれながらも店じまい~』 仕事が思ったよりも長引き、急ぎ足で最寄りの駅に向かっているあいだに、日はほとんど落ちてしまった。汗でワイシャツが濡れて気持ち悪いが、冷房の効いた車内を思い浮かべることで何とか耐え忍ぶ。何しろ今日を逃せば二度と機会は訪れないのだ。あの店は明日には無くなってしまうのだから… たまたま近くを通りかかったときに、偶然ガラス戸の張り紙が目に留まり、どうしても行っておかなければと思ったのだ。大学時代に随分と通った店の存在すら忘れていたにも関わらずである。...

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『エスパー~末路~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト33

『エスパー~末路~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト33

『エスパー~末路~』 「さあ始まりました人気エスパーの頂上決戦、1分間にいくつのスプーンを曲げられるのでしょうか?」 ステージには3人のエスパーが並ぶ。色鮮やかなシャツを着て観覧車に愛想をふりまく男性、黒いマントに身を包み多くを語らないミステリアスな雰囲気をした女性、正体不明という設定で仮面を被っている者も。それぞれ特徴のあるキャラクターをしている。 「それではいきますよ。用意スタート!」 一斉にスプーン曲げを始める。3人ともテンポ良くスプーンを曲げていき、その様子に観覧者は...

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『森〜凝縮〜』白川湊太郎-ショート小説コンテスト32

『森〜凝縮〜』白川湊太郎-ショート小説コンテスト32

『森〜凝縮〜』 私の好きな声優さんがラジオでブロッコリーのことを“凝縮した森”って言ってた。 なるほどね、たしかにグッと敷き詰められた森みたいな野菜だ。 あ、うん。見れば見るほど食べたくなくなってくるよ… 「またブロッコリー残して! ちゃんと食べなさいって言ってるでしょ!」 こうやって高校生になった今でも、野菜を残そうとしてお母さんに怒られているんだ。 他の野菜はほとんど食べているんだから、ブロッコリーくらい多めに見てくれないかな。 私は“凝縮した森”を上から眺めた。な...

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『床屋〜私達の行く末〜』白川湊太郎-ショート小説コンテスト31

『床屋〜私達の行く末〜』白川湊太郎-ショート小説コンテスト31

『床屋〜私達の行く末〜』 床が黒く染まっている。先程まで私の頭から生えていた髪の毛だ。だが今は私から切り離されており、床に散らばって存在している。これらは今でも私の身体の一部であるのだろうか。 「髭を剃る前に髪の毛持ってくね、お兄ちゃんごめんね~」 パートの女性が箒と塵取りを持って床に落ちた髪の毛を集めていった。 私の一部である髪の毛が塵取りの中へ吸い込まれていく。 「こっちもごめんね~」 女性は隣の席に落ちている髪の毛も集めていった。私の後に来た中年男性の髪の毛であ...

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