「不思議なことに、孤独は自分の力で育てることができない。 」
「最強の人間観察小説」とリスナーに勧められて読んだ小説。
主人公が友達に名前も決まった場所も無い店を紹介してもらい、毎回知らない女の子とそこで食事をするだけの小説。
にもかかわらず、ここまで多面性のある楽しみ方ができる小説はない。
「女と男を理解する。人を理解する。」
抽象的なものを、どう文字にして具体的に表現するか、嘘のつけない活字ならではの醍醐味を存分に生かしている。
何回読んでも一本の筋の通った見解と、多数の筋の可能性を示唆してきて、本当にためになる小説だ。
【作中名言】
何も喋らない女性を見ながら思案。
「どんな名前で、年齢はいくつで、出身はどこで、どんな身分で、どんな生活をしているのか、どんなことを考えているのか、そういった説明的な情報によって、その人間の味わいが変わるだろうか。それが、人の本当の価値だろうか。そんな情報は、いくらでも捏造することができる。そういった情報に、普段どれだけ私たちは惑わされているだろう。」
「今夜の月は、きっと今夜だけのものなのだ。今頃、彼女も同じ月を見ているかもしれない、その想像にこそ価値がある」
「不思議なことに、孤独は自分の力で育てることができない。 」
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