『エスパー~マジックパワー~』
引馬(ひくま)さんはすごい人だ。
精神科医というだけで、まずすごいのだが。
それだけではなく、学生時代はプロレスをしていたし。
少し前まで、芸能界にいた。
他人に優しくて、自分には厳しい。
泣いている子供がいたら、涙を拭いて。
どこからともなく、あめ玉を出してあげる。
「引馬さんって、本当はなんの人なの?」
僕は気になって、引馬さんに訊く。
「何も話したりしていないのに、僕の気持ちとかわかるし」
「ん? それはわかるさ」
「え、エスパーだから!? エスパー魔美だからか!!」
「左坤(さこん)くん、君は年はいくつなのかな?」
「二十五になった!!」
「そうだね。先日、誕生日だったもんねえ」
よしよし、と引馬さんは僕の頭を撫でる。
「大きくなったねえ」
「うんっ」
と頷いてから、はっとした。
――話が変わっている気がするっ!
「えっと、えっと、! 引馬さんって、どんなパワー使ってるの!?」
僕がそう訊くと、引馬さんは少し驚いた顔をして、ニコッと笑う。
「マジックパワー」
「へ?」
「このマジックパワーを使うと、どんなこともわかるんだぞー」
「す、すご! 僕にも使えるかな!!」
「使えるし、使っているんだよ。左坤くん」
引馬さんはそう言うと、ドアノブに手をかける。
僕は慌てて「何?」と訊く。
「どんなパワーなの?」
「それは、みんなを癒すパワーだよ」
ニコッと笑って、引馬さんは出ていった。
パタン、と扉が閉まった後。
少しだけ、考えてみた。
――僕、そんなことしてるかなあ。
まあ、でも。
引馬さんが言っているから、きっとそうなんだろうな。
てか、引馬さん。少し悲しそうな感じだった。
どうしたのだろう。
「…………」
何かあったら、僕がマジックパワーで助けよう。
そう決めた。
―緑川凛太郎―
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