『プール~水泳~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト41

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『プール~水泳~』

 昨日、プール開きの集会があった。
 そして、今日からプール――そう、水泳の授業が始まる。
 俺の学校は、教員が少ないから、学年の教員がプールの監視をしたりするらしい。
 この説明を受け、俺はとても楽しみで仕方がなかった。

 二限、俺のクラスは体育で。
 つまり、水泳で。
 俺は隣にいる川原さんに「あの」と声をかける。
「俺は女子更衣室を監視しているんで、川原さんはどうぞ野郎を見ていてくだせぃ」
「何を言っているんだ、馬鹿」
 川原さんは回し蹴りをしながら、俺に突っ込みをいれる。
「次、ふざけたことを言ったら、今度のライブは一緒に行ってあげないんだから」
「えー!? それは困る!!」
「だったら、そんなこと言わないで」
「はーい」
 次の休みは、川原さんと一緒にライブを見に行く。
 俺がここ最近好きなバンド。
 ロックだけど、曲が全部切ないもので。
 声も色っぽくて、好きだ。
 それに、ボーカルの雰囲気が川原さんに似ているのも、好きな要因。
「てか、川原さん。長袖暑くないんですか?」
「え?」
「夏日に、そんな暑そうな格好。しんどくない?」
「まあ、暑いけど。僕はすぐに冷えてしまうから、長袖は手放せないんです」
 てか、と川原さんは俺を見る。
「佐野さんも、暑くないんですか?」
「ああ、暑(あち)ぃけど。刺青があるから」
「ほんと、あんたって教師らしくない」
「あっはっはっはっはっ!! 褒めてもポメラニアンしか出ないよ」
「ポメラニアン、出るんすか」
「出そうか? 口から」
「怖っ」
「ははは、川原さんってさ、本当にか――」
 言いかけて、ピタリと止まる。
――俺、今…。
 可愛いって言いかけた。
 いや、そんな悪いことじゃないだろ。
 けど、何だろう。
「か? か、何です?」
 川原さんは俺を見る。
 見る、てか見上げる。
「佐野さん?」
「はあ゛ん? その、何でもねえっす」
「?」
 川原さんは小首を傾げる。
「はっきり言ってほしいんですけど」
「いや、その、あのさ。えっと」
「あ、そろそろ始まりますね。ちゃんと、監視しないとですよ」
「へい!」
「へいって…」
 ぷぷ、と川原さんは小さく笑う。
「やっぱり、佐野さんは面白い人ですね」
「お、おう!」
 俺は頷いて、プールの監視を川原さんと一緒に始めた。

 川原さんの笑顔が眩しいのは、プールの水の反射のせい。
 熱を感じるのは、刺青を隠すための長袖のせい。
 ドキドキするのも、きっと。

―緑川凛太郎―

ショート小説コンテスト

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