『メモ帳~黒髪メモ帳~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト43

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『メモ帳~黒髪メモ帳~』

 利一(りいち)は、よくメモを取る。
 理由はたった一つ、忘れないためだと言う。
 僕は利一とはずっと一緒にいるし、利一が忘れてしまっても、僕が覚えているから問題ないように思える。でも、利一は嫌だと言う。
 綺麗なショートヘアーの金髪、少しつり目で、アイラインを引いたような金眼をキラキラと太陽に輝かせて、風に靡かせて利一は優しく僕に言う。
「英忠(ひでただ)のことも、僕は忘れてしまうから」
 普段の利一なら、きっと言わないことをこの時の利一は言った。
 言ったのだ。
 僕は瞠目し、言葉を少し失った。
 それを見ると、利一はニコッと笑い「ごめんね」と言う。
「僕は、英忠のことが大好きだ」
「え?」
「でも、そのことも忘れてしまうからね」
 書いておくんだよ、と利一は少し分厚いメモ帳を僕に渡す。
「持っていてほしいな」
「……利一、あのさ」
「うん」
「一番下の黒紙は何?」
「それはね、英忠」
 利一は言う。
 とてもはっきりした口調で。
 僕の目を見て。
「  だよ」
「っ」
 その言葉が来ることは、予想できた。
 でも、僕は聞きたくなんかなくて。
 わざと聞こえない振りをして、利一に言う。
「ごめん、聞こえなかった」
「英忠、嘘とか下手だね」
 利一は笑って、僕の手を引く。
「大丈夫、それは全部全部、僕のことだから」
「……うん」
 手を引かれて、歩いてる途中。
 僕は、ハッとした。
 周りを見ると、そこは僕の家で、隣には利一が寝ている。
(あれ、寝ちゃったのか)
 と、ぼんやりと思い、僕はまた目を閉じる。
 利一から貰った分厚いメモ帳を持って。

――それはね、英忠――
――呪いなんだよ――

―緑川凛太郎―

ショート小説コンテスト

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