『ジャンクション~見えない~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト46



『ジャンクション~見えない~』

トラックの運転手というのは退屈だ。
毎日毎日同じルートを行ったり来たり。ほとんどの時間は単調な高速道路を走っている。
この日もいつもと同じルートの高速道路を走っていたが、ある地点で視界に一羽のカラスが飛び込んで来た。
「うわっ、びっくりした……」
奴は私の元を離れるとすぐに舞い上がっていった。その先にはこの道路と立体交差したもう一方の道路があった。ここが道路と道路が立体交差するジャンクションであることをすっかり忘れていた。見上げたことで上にも道路があることに気がつく。
立体交差する道路の奥には太陽があった。上はどんな道なんだろうか、なんだか太陽に近い向こうの道路に対して憧れのようなものを感じていた。
配送先の社長が話してくれた。
「あんた、あのジャンクションを通ってきたんだろ?」
私はそうですね、とだけ答える。
「あそこはカラスが運転の邪魔をするからね、気を付けなよ」
すでに邪魔されたことは言わなかった。

職場へ戻るときは荷物をすでに降ろしているためトラックは軽い。
身軽さもあるし、軽さによって不安定な感じもする。
ある地点に着くと再びカラスが飛び込んできた。
先程と違って一羽ではなく何十羽の群れをなして、私の視界を奪った。
後続の車のことも考えるとブレーキを掛けることもできなかったので私はそのままのスピードで運転する。
ドンッ、と大きな音が生まれた瞬間にカラスは飛び立ち、前方で渋滞ができていたことを教えられた。
相手と話すために車を降りようとしたところで気がついた、ここはさっき私が下の道路を通った立体交差点だったのだ。
「なんでスピードを落とさねえんだよ!」
渋滞と私の事故によって鳴りやまないクラクション、気になっていたはずの上の道はこんなにも騒がしいものだったのか……
私はこの瞬間にも下の道へ降りてこの状況を教えたいと思った。
ゲームならばショートカットしてすぐに降りられるのに、もしくはカラスならば。
そんなことを考えながら前方の運転手の元へ向かった。

―白川湊太郎―

ショート小説コンテスト

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