『暖炉~見やすさ~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト50

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『暖炉~見やすさ~』

暖炉のある部屋で最も座りたい場所はどこか。
おそらく多くの人間は暖かい場所を選ぶだろう。
一般的にも一番暖を取りやすい場所が上座になるらしい。
だが、私はそこを選ばない。
私は炎を見やすい場所に座りたい。
暖を取りやすい場所と炎を見やすい場所は似ているようで違う。
暖を取るだけであればできるだけ近づけば良いのだ。
実際に暖炉のすぐ傍ではペットの犬が寝そべっている。
犬は目を瞑っている。元はどこかで保護されたのだが、今では私の家で上品に振る舞ってくれている。

暖炉はとても素晴らしい発明品だ。家に居ながら安全に炎を見ることができるのだから。
この位置から炎を見て嫌がるのは、深い森に棲む獣達ぐらいだろう。
お気に入りの木製の揺り椅子に腰掛けて、暖かいミルクを飲みながら眺める炎はとても心地が良いものだった。

せっかくなので、ペットの犬と一緒に炎を見ようと思った。
私は寝ていた犬を抱えて、再び揺り椅子に座った。
「ほうら、この場所だって暖かいし、何より炎が見やすいだろう」
そう言って犬の顔を暖炉の方へグイっと動かした。
「どうだ、見えるかい?」
この景色を味わってもらいたかったが、どうだろう。
私が暖炉の方を向いている犬の顔を覗き込むと、目は充血し、口を半開きにしながらグルルルルと唸り声を上げていた。
そういえばこの犬が保護されたのは、どこか深い森だったような……

―白川湊太郎―

ショート小説コンテスト

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