『将棋~転生~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト51



『将棋~転生~』

目が覚めたときには部隊の最前線に並んでいた。
手には小刀が握られている。これで戦えというのだろうか。
状況を確認しようと周り見渡すと、右にも左にも私と同じ顔の奴がいた。
全部で九体。彼らの手にも小刀が握られている。
さらに前方ではこちらを向いた私が同じように小刀を握って並んでいる。
隣にいる奴、向かい側の奴、私という順番で動いた。
どうやら私の軍と敵の軍は交互に、しかも一体ずつ動けるらしい。
それを決めるのが誰かはわからなかったが、後方にいる王ではないようだった。

周りの奴が好きなだけ前に進めたり、斜めに動いたりしていたが、私は一歩ずつしか動けなかった。たまに後ろから私を飛び越える奴には羨ましさすらも感じていた。
私と向かい側の奴はお互いに進んで近づき、私の一歩によって急接近した。
お互いに同じ顔、小さな刀ではあったが腕を伸ばせば相手を刺すことのできる距離にいた。
どちらが先に刀を振るのか、そんなことを考える暇もなく私は向かい側の奴の小刀によって殺された。

次に目が覚めたときには先程の場所よりも進んだ位置にいた。
私はまた小刀を持ちながら一歩ずつ進んだが長い槍を持った奴にすぐ殺されてしまった。
眼が覚め、進み、殺され、また眼が覚め、進み、殺され、と何度も繰り返しているうちに今いる世界のことをだんだんと理解してきた。
おそらく私は殺されると殺した側の軍に入るらしい。
それは他の奴等も同じだが、それぞれの軍の王だけは殺されるところを見てはいない。
どうやら王を殺すことがこの戦いを終らせる唯一の方法のようだ。

何度目かの生まれ変わりでは、目の前に敵の王がいる状態で気がついた。
もちろん私の手には小刀、これで殺せば戦いが終わらせることができる。
緊張しながらその瞬間を待っていると、横から大きな車が走り込んできて、私の事を轢き飛ばしていった。

そして今、再び目の前には私と同じ顔の奴がこちらを向いている。
手には小刀を持ち、お互いにいつでも殺せる距離で仁王立ちしていた。
こいつはさっき私を殺したやつだろうか、今度こそ私が殺せるのだろうか、それとも再び殺されるのだろうか。
緊張しながら身構えていたが、どれだけ時間が経っても殺し合うことはなかった。
周りでは戦争が行われているにも関わらず、私達二人はお互いに殺せる状態で放置されていた。

私は戦いに飽き飽きしていた。
どうせ殺される度に戦う軍が変わるのだ。
いつか王が殺されて終わりを迎えたとき、きっと私は喜ぶことができない。
どこかで私達に動きの指示する者だけが勝者に成り得るのだろう。
おそらく目の前の奴も同じことを考えているはずだ。

―白川湊太郎―

ショート小説コンテスト

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