『電柱~チャンス~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト54

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『電柱~チャンス~』

憧れの彼女と並んで帰れるだけでも幸運なことだった。
「話したいことがあるんだ、一緒に帰らない?」
そこまでは言えた。しかしその後が大変だった。
「寒いね」
「うん」
「それで、話ってなにかな?」
まだ言い出す勇気はなかった。何かきっかけが欲しかった。
辺りを見渡し、きっかけを探す、とすぐ近くに電柱が見えた。
「あの、電柱に着いたら話すよ」
「……わかった」
視界に入る距離なんてあっと言う間に辿り着いてしまう。
しかし、俺はまだ言い出す勇気など出来ていない。
「電柱に着いたよ」
悩んで俺の視界には再び電柱が。
「もうちょっと待って、次の電柱まで」
「わかった」
よくよく見てみると電柱なんてそこら中にある。
まだ言うチャンスはいくらでもある。
「着いたよ」
「まだ、もうちょっと待って」
「……あ、そう」
なかなか勇気を出すことができずに、歩き続けるばかり。
電柱の数だけ伝えるチャンスはあると思っていた。

そうやって後伸ばしにしているうちに、気がつくといつのまにか彼女が乗るバス停に着いていた。
「もうバスが来るから、ここで」
今しかない、と思った俺は、遂に言い足す決心がつき、息を大きく吸う、が
「何かわからないけれど、後回しにしてしまうくらいの話だったんだね」
と彼女は苦笑いをしている。
その言葉を聞いてショックを受けた俺は、バスに乗り込み去っていく彼女を見送ることすらできなかった。
チャンスは無限にあるわけではなかった。

―白川湊太郎―

ショート小説コンテスト

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