『電柱~シアトル~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト54

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『電柱~シアトル~』

ホームステイ先に帰るバスで日本人っぽい女性を見つけた。背が高くショートカットで目が大きかった。
大体歳も同い年ぐらいだろう。韓国人や台湾人の可能性もあるが化粧の仕方や眉毛の形が日本人だと思った。
席が空いているバス内で、僕は座っており、彼女は立っていた。大きく横揺れのするバスなのに不思議に思った。
海外だからなのか、もう二度と会うことが無いという思いからか、僕は知らず知らず彼女に話しかけていた。
「どうして座らないの?」
彼女は僕の方を見てキョトンとした顔で「日本人だったんだ。」と言った。
10代でもあるし、異国の地でなんだか、どららも安心したことを覚えている。
それからは帰りのバスで何度かあった。だから仲よくなるのも早かった。
何度か会ううちに僕は彼女に魅かれており、デートの約束までこぎつけた。

翌日、スクールでの授業が終わると僕は待ち合わせの大きな図書館の前に行った。
彼女はもう到着していたが周りに2、3人の友達がいて談笑していた。
僕は「Hello,Where are you from?」と彼女の前だから強がっていたのか、彼らの輪に気軽に話しかけ談笑に入っていった。
どうやら韓国人のようで図書館に用があるようだった。一緒にいくか?と聞かれたが「ちょっと用事があるんだ」と断り、彼女の方をみた。彼女は僕の意志に任せていたようで、その結論で良いようだった。

シアトルに来たのは僕の方が2週間ほど早かったので、彼女をいろんなところへ案内するという体裁だった。
英語の会話から日本語になることで開放された僕たちは地元や家族のことなどたくさんのことを話した。
チャイナタウンや博物館、自由にパソコンが使える場所や、街の古着屋さんなんかを案内し、最後にサンセットを見せてあげようと思っていた。彼女は非常に喜んでおり、それを見ていて僕も嬉しかった。

日が落ちるスピードが早くなってきたのか、僕たちがのんびり歩きすぎたのかビーチまでの道で結構暗くなってきた。「ちょっと急ごうか。」とだけ言い、気を遣いながら早歩きをすると、彼女は走り出した。
「走るの得意だから大丈夫だよ。」と言うので、「よっしゃじゃあ走ろう。」と言い、彼女を追い抜かすついでに彼女の手首を掴んだ。痛がるといけないので優しく。手汗がばれないように少し空間を空けて。
次の電柱で手に繋ぎなおそう。いや、その次の電柱で。と等間隔に並べられた景色を幾度も通り過ぎ、僕の心臓が脈打っているの感じた。

ビーチに沈むサンセットはとても綺麗で、多くのカップルが同じ方向を向いていた。
結局僕は手を握ることは出来ず、もう走ることもないのにずっと手首を握っていた。
これを離したら今まで縮めた距離も全て離れていきそうで怖かった。
太陽の光が沈んでいっても僕たちはまだ同じ方向を向きしばらく立っていたのを覚えている。

―黒川洸太郎―

ショート小説コンテスト

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