『涙~悲鳴~』
わたしは話をすることができない。
口から出るのは嗚咽に似た何かだ。
それに気づいてからは、わたしは口を利かないようにした。
母には「どうして、口を利かないの」と言われるが、それを答えることは口ではできない。
母はわたしが普通の子でいるように言った。
ゆえに、話をすることができないという異常は許されないのである。
わたしは誤魔化すように笑って頷く。
『本当は、たくさん話をしたいんだ。だけど、口から言葉が出てこないんだよ。これをあなたに知られることが怖いんだ』
そんな言葉を叫ぶけど、母には聞こえないし、誰にも聞こえない。
姉はわたしと似たように口を利かない人。
でも、姉は愛されている。
姉は、そこにいるだけで許されている。
わたしとは違う。
そんな違いを、わたしは今日も知る。
小さな部屋で、わたしは今日も聞かされる。
楽しそうに会話をする母と姉。そして、兄。
それはまるで家族のよう。
わたしにはわからない。
けれど、きっと彼らは家族で、わたしは違う。
『なら、わたしは何だろう』
そんな言葉も声に出せないまま。
今日も、無言で涙を流し、悲鳴を上げる。
―緑川凛太郎―
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