『涙~悲鳴~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト57

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『涙~悲鳴~』

 わたしは話をすることができない。
 口から出るのは嗚咽に似た何かだ。
 それに気づいてからは、わたしは口を利かないようにした。
 母には「どうして、口を利かないの」と言われるが、それを答えることは口ではできない。
 母はわたしが普通の子でいるように言った。
 ゆえに、話をすることができないという異常は許されないのである。
 わたしは誤魔化すように笑って頷く。
『本当は、たくさん話をしたいんだ。だけど、口から言葉が出てこないんだよ。これをあなたに知られることが怖いんだ』
 そんな言葉を叫ぶけど、母には聞こえないし、誰にも聞こえない。

 姉はわたしと似たように口を利かない人。
 でも、姉は愛されている。
 姉は、そこにいるだけで許されている。
 わたしとは違う。

 そんな違いを、わたしは今日も知る。

 小さな部屋で、わたしは今日も聞かされる。
 楽しそうに会話をする母と姉。そして、兄。
 それはまるで家族のよう。
 わたしにはわからない。
 けれど、きっと彼らは家族で、わたしは違う。

『なら、わたしは何だろう』

 そんな言葉も声に出せないまま。
 今日も、無言で涙を流し、悲鳴を上げる。

―緑川凛太郎―

ショート小説コンテスト

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