『アルバム~卒業~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト60

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『アルバム~焦燥感~』

ホームルームの時間にも関わらず卒業アルバムが配布されるとクラス中がお祭り騒ぎになった。
教師も卒業間近の生徒たちを咎めることなど無く、一緒にアルバムを捲り懐かしんでいるようだった。
生徒たちもスマホを取り出し教師に写真を求めるなど、もう自制が効かない状態だった。

僕はホームルーム自体がこのままいつ終わるのだろうかと内心いらいらしていた。
この雑音まみれの教室から早く出たいのだが教師自体がこの調子では『終わり』が見つからない。
でも僕は教師に対し「もうホームルームが終わりだったら帰ってもいいですか?」と訊ける訳でもなく一人卒業アルバムをぺらぺらと捲る。

にやにやとした顔写真が並ぶ中、一人真正面を向き遠くを見据えるような目をした僕がいた。
俺はこんな顔なんだと初めて自分の顔と向き合った気がした。
みんな何が面白くてこんな顔が出来るのだろう。偽ることが得意でないとこれから先も僕はずっとこうして一人でいることになるのだろうか。そんなことを考えた。

クラスの中心人物たちがアルバムの中でも中心を占めている。
僕は案の定というべきかどこにも存在していない。
大学には行っても、社会人になっても、彼らが中心で物事は回り、僕のようなタイプは淘汰されていくのが目に見えていた。
大学受験はとりあえず受かったが経済学部という分野で僕は何をするのだろうか。
勉強した先にある未来は偽りの笑顔なのだろうか。

「はーい。静かにしろー。」
クラス中の雑音が教師の一言で消える。僕はやっと終わるのかと安堵する。
「お前たちは今日で卒業だ。これから先の未来は俺にも誰にも分からない。未来を作っていくのはお前たち自身だ。頑張れよ!」
僕はこれがこの教師が30数年生きてきた結論かと思うと悲しくなった。
僕は失望と焦燥感だけを味わいアルバムを鞄の中に入れた。

―黒川洸太郎―

ショート小説コンテスト

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