『豚~食われる~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト61

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『豚~食われる~』

ふとTVを観ていると
「この豚はなんでこんなに美味しいんですか?」とどこかの芸人が尋ねた時に、
「実は良質などんぐりを日々食べさせているからなんです。」と応えた瞬間に画面が切り替わった。
そこにはどんぐりを一心不乱に食べる豚が映しだされ、それを見守る養豚業者の方がいた。

僕は何気なく『豚 食われる側』と検索する。
すると、『千と千尋の神隠し』において何故千尋の両親は豚になったのかというサイトだった。
そこには、新たな場所に踏み込んだ時に生命力を発揮する10代の千尋とのコントラストとして、親側は順応せずに食われていく豚の設定にしたと、嘘か本当か分からないが書いてあった。

僕はそういえば昔に豚を育てて最終的に食うか食わないかを話し合う小学校の物語があったなと思いだした。
あれは結局豚を食べたのか食べなかったのかが気になり検索してみた。
すると結果としては「食肉センターに送る」という決断をしたと書いてあった。
それを見てフラッシュバックした僕は、泣きながらトラックを見送る小学生たちの映像が脳裏に浮かんだ。

僕はテレビを観てネットで検索して、「ふーん」とか「えっ」とか声に出し日々を送っている。
今回は『豚』のことだったが、昨日は『太陰暦』について調べていた。
脳に送って成長した気分になったところで、アウトプットする場所も無くもう3年間家からは出ていない。
喜怒哀楽のほとんどの感情を忘れ、言語までは奪われまいと独りごちる。
何かの助けになるのではと溜めこんだ僕の知識が報われるときは来るのだろうか。
どうしても一歩が踏み出せず準備ばかりをしている僕はその晩、鬼のように練習をしているのに試合には出ないボクサーの夢を見た。

今日も一日が始まる。誰も助けてはくれない。
食われるのが怖くて食う側にも立てない僕は、豚の偉大さに気づく。
『どちらの選択肢も無いのなら食われる方が良いのかも。』と思い、僕は3年ぶりに玄関を開けた。

―黒川洸太郎―

ショート小説コンテスト

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