『挨拶~気付き~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト63

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『挨拶~気付き~』

僕が「こんにちは」と言うと大人が訝しげな顔をした。
何気ない挨拶が不審者として通報されるケースが増えたからだ。僕は気にしない。

僕の母は僕が小学校の時に亡くなったが、よく挨拶をする人だった。赤の他人にも挨拶をするものだから僕は母に問うたことがある。
すると母は屈託のない笑みを浮かべて「挨拶をすると相手も挨拶してくれるでしょ。別にそれに意味なんて無くていいの。その日に少しでも何かが変わった方が面白いじゃない。」と言っていた。
僕は納得がいかない。「相手は誰だか分からない人に挨拶されたら怖いんじゃないの?」
母は応える。「そんなことないわよ。誰でも声を掛けられると嬉しいものよ。」
「そんなもんかなぁ。」僕はにわかに信じられなかった。

朝の登校中、たまに知らないおじいちゃんやおばあちゃんから挨拶をされても特に嬉しくもない。
お父さんは毎朝「おはよう」と言うが、嬉しいと思ったことはない。
その時は母が言う言葉の意味が分からなかった。

だけど、母が死んだときに僕は気付いたことがある。
呼びかけても反応が無いことが一番悲しいということ。
また、声に反応してくれるだけで泣きそうになるぐらい嬉しいだろうということ。

母は言葉足らずだ。
『誰でも声を掛けられると嬉しい』わけではない。
『誰かが自分の行動に反応してくれることは幸せなこと』なんだ。

僕は嫌な顔をされても気にしない。
「こんにちは」と挨拶をする。僕は生きていて彼らも生きている。
誰かが誰かに反応しあって今日も世界は回っていくんだ。
これは僕と母を繋ぎあわせる『気付き』というやつだ。

―黒川洸太郎―

ショート小説コンテスト

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