【僕にとってのパイロットフィッシュは誰であって、何だろうか?】
ブックオフで50円で購入。にもかかわらず僕に多大な影響を与えた一冊。
ストーリーの内容は大変薄いが、心理描写が大変濃い。面白くなき世を面白く。本ってこうゆうことだよなぁって大崎善生さんの本を読むと感じる。
パイロットフィッシュとは、熱帯魚を育てるための水槽作りのために必要な魚。パイロットフィッシュを初めに入れ、パイロットフィッシュの糞で微生物を発生させる。その微生物が奇麗な観賞用の熱帯魚が棲む居場所作りを手伝い、最終的にパイロットフィッシュは捨てられる。
人にとってのパイロットフィッシュは何なのだろうか?そうやって読んでたら、悩ましくて、でもさわやかで、普遍的で、幸せで、様々な気持ちを与えてくれる。
こうゆうドキドキ感が、小説の醍醐味だと感じさせてくれる小説。
作中名言
「君がたとえ僕の前からいなくなったとしても二人で過ごしていた日々の記憶は残る。その記憶が僕の中にある限り、僕はその記憶の中の君から影響を与え続けられることになる。もちろん由紀子だけじゃなくて、両親やナベさんや、これまでに出会ってきた多くの人たちから影響を受け続け、そしてそんな人たちと過ごした時間の記憶の集合体のようになって今の僕があるのかもしれないと考えることがある。 僕は君とは別れてはいない。それが人と人が出会うということなんじゃないかな。一度出会った人間は二度と別れることはできない 」
「本当に偉い人間なんてどこにもいないし、成功した人間も幸福な人間もいなくて、ただあるとすれば人間はその過程をいつまでも辿っているということだけなのかもしれない。幸福は本当の幸福ではなくて、幸福の過程にしか過ぎず、たとえそう見える人間でも実はいつも不安と焦りに身を焦がしながらその道を必死に歩いているのだろう。」
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