ショート小説 一覧

『月~向こう側から~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト44

『月~向こう側から~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト44

『月~向こう側から~』 「大気圏突入、着陸まで3、2、1……着陸完了」 乗って来た機械が開いて中から顔を出す者がいた。 「ここが地球か」 夜だった。何があるのかわからないほど真っ暗であったが、実際に何もなかった。 遠くの方で何かが飛んでいるようにも見える。 「あれって」 空を見て、声をあげる者がいた。その先では白くて丸い物体が空に浮んでいた。 「あれが月なのか」 「そう、私達の星だ」 「綺麗だな」 「本で見たものよりもずっと綺麗だ」 地球の探索は順調に進...

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『月~月見ウタ~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト44

『月~月見ウタ~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト44

『月~月見ウタ~』 今宵は十五夜。  俺ら百鬼出版社社員一同は、社長が住むマンションの屋上で月見をすることにした。 「神呪(かみの)さん! お酌!」  今年の五月に二十歳を迎えたばかりの柳楽(なぎら)くんが、慣れない手つきで俺が持つお猪口に酒を注ぐ。 「神呪さん、日本酒って美味しい?」 「あー、まあまあかな。俺は普段、チューハイばかり飲んでるし」 「チューハイ?」 「うめぇぞ、チューハイ。良い感じに酔える」  俺はニィッと笑い、社長を指す。 「気になるなら、兄に訊...

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『月~キムチ鍋~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト44

『月~キムチ鍋~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト44

『月~キムチ鍋~』 勤務先と家を行き帰りをするだけの日々がとても退屈でいつも死にたいと思っていた。 なにかしらの変化をつけなければ自分がおかしくなりそうで、晩飯だけでも変化をつけようと思った。 少し遠めのスーパーへ歩き、何を食べようか考えた。 一人用のキムチ鍋が目についた。小さい頃大好きだったキムチ鍋。今日はこれにしてみようか。 帰り道ふと夜空を見上げると、とても月が奇麗だった。ずっと見ていると吸い込まれそうな夜空に見とれながらとことこと家路を歩く。 キムチ鍋を袋から...

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『メモ帳~かっこいい仕草~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト43

『メモ帳~かっこいい仕草~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト43

『メモ帳~かっこいい仕草~』 辻先輩に仕事を教えていただいて大体1年が経った。 とは言っても、この人から学んだ事は接待の時にカラオケでヘドバンする方法ぐらいだった。 それぐらいに適当に僕をあしらい、見て覚えればそれで良いじゃんと、自分でも言っていた。 僕の方がエクセルやパワポは使いこなしているし、上司からの評価も良い。 あいつはあんな奴だから、お前がフォローするんだぞと言われる始末だ。 まぁ早くあんな先輩は放っといて、早く出世でもしようなんて思っていた。 ただ辻...

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『メモ帳~黒髪メモ帳~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト43

『メモ帳~黒髪メモ帳~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト43

『メモ帳~黒髪メモ帳~』  利一(りいち)は、よくメモを取る。  理由はたった一つ、忘れないためだと言う。  僕は利一とはずっと一緒にいるし、利一が忘れてしまっても、僕が覚えているから問題ないように思える。でも、利一は嫌だと言う。  綺麗なショートヘアーの金髪、少しつり目で、アイラインを引いたような金眼をキラキラと太陽に輝かせて、風に靡かせて利一は優しく僕に言う。 「英忠(ひでただ)のことも、僕は忘れてしまうから」  普段の利一なら、きっと言わないことをこの時の利一は言っ...

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『メモ帳~瞬間~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト43

『メモ帳~瞬間~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト43

『メモ帳~瞬間~』 「そうなんですね! すごいなあ……あっ、メモを取ってもいいですか?」 上司からの返答よりも先にポケットからボールペンとメモ帳を取りだした。 「出たよ。飲み会の席ぐらい大人しく飲んでおけよ」 隣に座る先輩にからかわれても気にはしない。 「いやいや、そういうわけにはいかないんですって」 そう言いながら俺はメモ帳を胸の高さに構えて、一字も逃さないようにしようと見せるため身体を前屈みにする。上司はさっきよりも一段と嬉しそうな表情をして話し始めた。 飲み会での...

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『河童~お皿の深さ~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト42

『河童~お皿の深さ~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト42

『河童~お皿の深さ~』 「あの、もしよかったら僕と相撲をとってもらいたいんですけど」  丁寧な口調で話しかけてきたのは子供、ではなく子供の体格をした河童だった。 「きゅうりあげますんで」 「え、もうすぐ雨降るらしいから、早く帰りたいんですけど」 「そんなこと言わずに、きゅうりあげますんで」  河童はさもきゅうりが万人の好物であるかのように話している。 「じゃあ、一回だけですよ」 「本当ですか? ありがとうございます!」 土俵なんてものはなく、広い河川敷で行うことにな...

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『河童~君に付き合う日~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト42

『河童~君に付き合う日~』緑川凛太郎-ショート小説コンテスト42

『河童~君に付き合う日~』  今日は、俺が川原さんに付き合う日。  そうなったのも、一週間前のこと。 ∬  水泳の授業で、俺が川原さんに「え、おっぱいないの? 川原さん、女の子でしょ~?」とふざけて言ったら、周りにいた生徒たちが「兄貴、さすがにそれは酷い」とか「これは川原先生に土下座とかしないと…」とか「切腹しないと」と言われたのだ。ヤバイな、と思い川原さんを見ると、彼は泣きそうな顔をして「良いよ」と言った。そして、その日の放課後に体育館裏に呼び出されて、殺されるな、...

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『河童~具体的な何か~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト42

『河童~具体的な何か~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト42

あの子がこの池で亡くなってからもう10年が経つ。 それからは、誰かが水面に人影を見ただの適当なことを言って、噂になったりしていた。 「なぁ。」 「・・・?」 「なぁて!」 誰に話しかけられたのか分からず、きょろきょろしていると突然顔に冷たいものがかかった。 「つめた!」と思わず口から出るも、どこから飛んできたのかも分からない。 「ここやて。ここ。池んとこやんか。」 「ヒっ!」僕は恐怖のあまり声が上づってしまった。 そこには河童の格好をした親父が池に立っていた。 ...

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『プール~勉強する意味~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト41

『プール~勉強する意味~』黒川洸太郎-ショート小説コンテスト41

『プール~勉強する意味~』 どこからかプールの匂いがして、なにか遠い昔の記憶が横切った。 あれはいつだったかな。誰かが何かを言ってたな。大事な事だった気がする。 ドン!助手席で息子が塾で配布された英単語帳を放り投げた。 「こんなもん意味ねぇよ。」 これが最近の息子の口癖だ。 なにもかもが面倒くさい年頃なんだろう。俺にもそういえばあった。 とにかく何をするのもイライラしてて、それに対して自分でもダメだと気付いているから、誰かにやいのやいの言われるのが嫌で。 日々...

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