白川湊太郎の小説 一覧

『豚~跳べない豚~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト61

『豚~跳べない豚~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト61

『豚~跳べない豚~』 「飛べない豚は只の豚」 なんて言葉が生まれてから、どれだけの太ったことが嫌な思いをしたことか 「次、藤川」 先生に呼ばれて、僕は重い腰を上げる。 「ブタじゃん」 「どうせ無理だよ」 みんな、僕に聞こえないように、なんて気を遣うことはしなかった。 遠くにある跳び箱を見つめた。 四段、60センチの木箱にさえも笑われてる気がした。 ピッ、と笛の音で動き出す。 笛一つで動き出す。この行為さえも、自分がしつけられた豚のように思えた。 ゆっくり...

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『アルバム~笑顔~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト60

『アルバム~笑顔~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト60

『アルバム~笑顔~』 最後の挨拶が終わり、教室の中央には大きな輪が形成されていく。 扉から出て行く俺に背中を向けているにも見えた。 すでに教科書は自宅に持って帰っていたため、この日唯一の荷物と言えば大きな卒業アルバムだった。中身に興味がない俺にとっては只の重たい紙の束でしかない。 「ただいまー」 「おかえり、卒業おめでとう、早かったね」 母さんは俺が卒業式なのにすぐ帰って来たことに対して、何も思わないのだろうか。 俺は何も言わずに、アルバムをリビングのテーブルに置...

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『切符~選んで~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト59

『切符~選んで~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト59

『切符~選んで~』 目が覚めると部屋には私しかいなかった。 おーい、と呼んでも返事はない。 そうか、昨日は妻と喧嘩して、仲直りをしないまま寝てしまったんだった。 喧嘩の理由なんて些細なこと、俺は忘れてしまった。 スマートフォンを確認してみたが連絡はなかった。 その代わりに画面の上部にはニュースが表示されている。 なにやら最寄り駅近くの線路で事故があり、列車に遅れが出ているらしい。 事故があった駅を含めて、私の家の近くにはJR、地下鉄、私鉄と3つの駅があった。 どこか...

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『カーテン~内緒で~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト58

『カーテン~内緒で~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト58

『カーテン~内緒で~』 何だかんだで、僕と川中さんは互いの家を行き来する仲になった。  事の発端は、僕があまりにも色々なことができないからなのだけれど。  川中さんは、そんな僕を「仕方ないですね」とため息混じりに言い、優しく家に入れてくれる。  今日は珍しく川中さんから「家に来て」と言われ、少しルンラルンラしながら川中さんの家に向かっている。  僕の家から、歩いて十五分くらい。  走ったら五分。 「スキップしながら行くか」  僕はスキップしながら川中さんの家の前まで行...

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『涙~採取~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト57

『涙~採取~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト57

『涙~採取~』 恋人に振られて、大きなビルの前で泣いている私。 声を押し殺しながらただただ涙を流していました。 ほとんどの人はこちらに気づくこともなく通りすぎていき、 たまに気づいた人でさえも知らぬフリをしています。 まあ、優しい誰かに話しかけられても「構わないでください」としか答えるつもりでしたが...... そんな私の前に一人の男性が現れました。 どこかのパーティの帰りでしょうか、恐らくは歳は40過ぎ。 素敵なタキシードを着こなして、右手にはステッキを持っています...

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『プリン~上辺~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト56

『プリン~上辺~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト56

『プリン~上辺~』 市販のプラスチック容器のプリンを白いお皿に移した。 黄色いプリンの上部にはカラメルソースがかけられている。 「せーの」 『いただきます』 娘の楓花とのおやつの時間だ。4歳の娘には一人分のプリンはまだ多すぎるので、いつも二人で分けている。 今から食べ始める、というところで楓花が不思議なことを口にした。 「ぷりんのおいしいところもらうね」 「ん?」 意味が分からない私は行動を見守ることにした。 すると彼女は小さな手でスプーンを持ち、プリンの上...

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『上司~Super.B~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト55

『上司~Super.B~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト55

『上司~Super.B~』 オフィスでは、今日もみな忙しそうに働いている。 ある者は取引先に送るメールを作成し、ある者はエクセルに四苦八苦している。 一人の新人が先輩に質問した。 「今度の企画、二つの案を考えたんですけど、どちらにしたらいいでしょうか?」 それに対して先輩が答える 「ああ、それはSuper.Bに聞けばいいよ」 また別の新人が、別の先輩に質問をした。 「この書類はどこで管理したらいいですか?」 「うん、それもSuper.Bに聞いたらいいよ」 新...

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『電柱~チャンス~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト54

『電柱~チャンス~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト54

『電柱~チャンス~』 憧れの彼女と並んで帰れるだけでも幸運なことだった。 「話したいことがあるんだ、一緒に帰らない?」 そこまでは言えた。しかしその後が大変だった。 「寒いね」 「うん」 「それで、話ってなにかな?」 まだ言い出す勇気はなかった。何かきっかけが欲しかった。 辺りを見渡し、きっかけを探す、とすぐ近くに電柱が見えた。 「あの、電柱に着いたら話すよ」 「……わかった」 視界に入る距離なんてあっと言う間に辿り着いてしまう。 しかし、俺はまだ言い出す勇気...

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『みかん~生き方~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト53

『みかん~生き方~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト53

『みかん~生き方~』 みかんにとっての晴れ舞台ってどこなんだろう。 そんなことを考えながら箱詰めされた私は出荷された。 「腐らないと良いけどね」 近くのみかんが心配そうに話しかけてきた。 私は、そうだね、としか答えることができなかった。 出荷された私はスーパーに並べられた。 どうやら一年が終わりを迎える時期らしく、スーパーはたくさんの人で溢れていた。 「あら、あなたはどちらの出身なの?」 声のした方を確認すると、隣の売り場のみかんが話しかけてきた。 「熊本で...

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『プレゼント~あ、た、し~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト52

『プレゼント~あ、た、し~』白川湊太郎-ショート小説コンテスト52

『プレゼント~あ、た、し~』 「これやってみたいんだー」 実花が嬉しそうに見せてきたananの表紙には『プレゼントはあ、た、し♡を実際にやる方法』と見出しが。どうやらマガジンハウス社は頭がおかしくなったようだ。 雑誌の中身を確認すると「自分自身をプレゼントして許される女の子は?」「自分自身をラッピングする方法」などが書かれてある。これが大真面目なんだから恐ろしい世の中だ。 「ね、だから由利に助けて欲しいの」 彼女は自分自身にリボンを結びつけたいらしい。東急ハンズに勤務...

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